「過去の話なのだけれど、日本と日本人の近未来のような感じもする不思議な雰囲気がありました。」バンクーバーの朝日 Push6700さんの映画レビュー(感想・評価)
過去の話なのだけれど、日本と日本人の近未来のような感じもする不思議な雰囲気がありました。
カナダのバンクーバーに日本人街があったというのは知らなかった。
しかもそこに日本人だけの野球チームがあったというのに驚いた。
しかも戦術的には、現在の日本のスモールベースボールそのもの。
戦前のカナダに、こんなチームがあったなんて、まさに”事実は小説より奇なり”です。
海外で3年働けば、日本で一生楽に暮らせるという噂を聞いて、カナダに移住した日本人が多数いた。しかし世の中そんなに甘くなく、人種差別が横行し、白人の半分の給料で、二倍働かされ、貧困と重労働に喘ぐ日々。二世達は、そんな中でも、少しでも楽しみを見つけようと、日本人街で“バンクーバー朝日”という野球チームを結成して、アマチュアリーグに参加していた。白人のパワーに圧倒され、負け続け、常にリーグ最下位の朝日。そんな時、ビーンボールまがいの球にバットが当たってしまい、アウトになったレジー笠原(妻夫木聡)には、何か引っかかるものがあった。次の試合、バントヒット、盗塁、悪送球で、1点とったレジー笠原はこれだ!と確信する。チームでバント攻撃を始めた朝日は、相手のデータもとるようになり、それらをうまく生かして連戦連勝。その戦略は、ブレインベースボール(頭脳野球)と呼ばれるようになるのだが・・・。
このストーリーに、いろんな枝葉をくっつけて、スター共演の群像劇になっています。
本当はどうだったのかわからないけど、この小さな日本人街の人々と朝日の野球が、世界の中での日本と日本人を表していると思う。
日本人にとって、野球は特別なスポーツ。魂と思い入れが、いっぱい詰まっているような気がする。(やっぱりサッカーじゃないかな・・・?)
「42」に似ているけれども、「42」は個人で対応しているが、この映画では集団なのも日本人的。
白人のパワーに対して、朝日の野球は、小技・データ、街の人々は、絆・精神力等、それ以外のもので対応しようとするが、なかなかうまくいかない。
駆け引きができず、謝罪ばかりしている人がいるかと思えば、キレて突っかかっていったりする人がいる。
中でも、レジー笠原の職場、製材所の白人現場監督が言っていた「日本人は愚かだ。ちょっとうまくいくと、図に乗って間違いをおかす。」という台詞は名言。
反論のしようがないです。
過去の話なのだけれど、日本と日本人の近未来のような感じもする不思議な雰囲気があります。
できれば、枝葉中心ではなくて、野球の試合、朝日のリーグ戦中心のストーリーだったらもっと面白かったような気がしました。