「SF作品は設定がいかに重要かを再認識します」パッセンジャー かるかんさんの映画レビュー(感想・評価)
SF作品は設定がいかに重要かを再認識します
星間航行中の宇宙船で予定よりも早く人工冬眠から目覚めてしまった乗客が孤独の葛藤や航行の危機に立ち向かうストーリー。
これ自体は半世紀以上前から使われている設定ですが、SFものは大体が先発の作品に何かしら影響を受けているものがほとんどですし特に良し悪しということはない印象です。
しかしながら作品中の設定やストーリーに粗さが見られるのがいただけませんでした。
個人的に感じた突っ込みどころは、
・人工冬眠装置の故障は隕石の衝突によるものでしたが、物理的な破損に対する対策がなにもなされていないのは設計からしておかしいのでは?
・エネルギー手段が核融合装置であれば熱による暴走は起こり得ないのでは?
核分裂反応と異なり炉心が安定しなければ融合自体ができなくなるのが特徴なはずです。
ただこれは現代のそれとは違う原理だと反論できるものとも思います。
・亜光速で動いている機体の重力装置が故障した場合は穏やかな無重力状態にならず、加速度方向に引っ張られてしまうのでは?
・主人公と同じく装置の故障で目覚めた甲板長が2時間程度で退場させられるのはさすがにシナリオ回しのためのこじつけ感が強いです
SF作品は現実に無いものに対していかに説得力を持たせられるかが重要だと個人的には考えます。
その点ではちょっと残念な部分が多い作品ではありました。
ただ、アカデミー賞の美術賞にノミネートされただけあり、宇宙船の外観や内装はとても秀逸です。
特にキャビンは極端に未来的な作り物感がなく、「ありそう」なデザインとなっており、またCGらしさも少ない丁寧な作りなのが良かったです。
話の内容はともあれ映像美は楽しめました。