「宇宙船あいのり号」パッセンジャー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
宇宙船あいのり号
「イミテーション・ゲーム」で絶賛されたモルテン・ティルドゥム監督と、今旬のジェニファー・ローレンスとクリス・プラット共演という魅力的なトリオだったのにも関わらず、公開時は鈍い評価に。
難点やツッコミ所はあるものの、思ってたよりなかなか面白かった。
地球から120年かけて移住可能な惑星へ航行中の宇宙船。
船を襲ったある事故で冷凍ポッドが故障し、一人目覚めてしまったジム。
到着まで後90年。冷凍ポッドに戻る手段ナシ。地球への連絡手段もナシ。
SF設定だが、もし自分だったら?…と、つい考えてしまう。
運命を受け入れるか、自殺するか、いっその事全員起こすか。
絶望したある時、“眠れるポッドのオーロラ姫”に恋をする。
散々悩んだ挙げ句、故障を装って彼女を起こしてしまう…。
彼女を起こした時点で続く展開は容易く予想付く。
言ってみれば、世界にたった二人の男と女。しかも、イケメンと美女。
当然の如く、恋に落ちる。
が、全てが上手くいく訳無く。
ジムが起こした事がオーロラにバレ…。
幸せだった状況が一転して、最悪の修羅場に…。
ジムがやった事は絶対に許される事ではない。
夢があったオーロラ。「私の人生を返して!」と責められて当然。
でもねぇ…、
ジェニファー・ローレンスと二人っきりですよ!
相変わらず魅惑のボディ!
ジェニファーとクリスはさすがの絶妙のケミストリー。
マイケル・シーンはナイスなアンドロイドだが、“秘密”が出来ないのが玉にキズ…。
ほぼジェニファーとクリス(と時々マイケル・シーン)の二人芝居の中、ローレンス・フィッシュバーンの名が。
ちょっと危機的状況に対処する唐突な役回りだったが、彼の存在にどんなに救われた事か。
宇宙船内のセットは素晴らしい。
こういう広大で贅沢な宇宙船での長旅は、状況は別にせよ、ちょっと憧れる。
「マクロス」みたいでもあり、ドラえもんの映画の「銀河超特急」的でもある。
そういや、藤子・F・不二雄のSF短編作品でも長距離航行中の宇宙船内での宇宙サバイバルみたいな話があり、何故か不思議と本作が気に入る事が出来たのはその為かも…?
ラスト、故障相次ぐ宇宙船の爆発が分かり、それを回避しようと奔走する展開はスリリング。
何でもシステム化された宇宙船内は風刺もたっぷり。
一定のエンタメ性は楽しめた。
しかし本作、もうちょっとこうしたら?…とか、別の展開だったら?…とか、思う点が有り過ぎる。
開幕早々、いきなり隕石衝突で宇宙船に異常が起きた事を見せてしまう。そのシーンを描かず、突然ジムが目覚めるシーンから始まったらどうだろう。見る側もジムと同じ状況になり、段々と宇宙船に起きた異常の原因が分かってきて…の方がもっと引き込まれたと思う。
それから、
宇宙に放り出されたジムがあのまま…とか、
冷凍ポッドに戻る手段を見つけ、ジムはそれをオーロラに譲り…とか、
そういう切ない展開だったらもっと印象違うものになってただろうが、本作は一番ご都合主義&甘々の結末に。
そこら辺致し方無いが、だって本作は、
ハッピーエンドな“宇宙船あいのり号”なのだから。