「青と赤、そして影」ジョン・ウィック すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
青と赤、そして影
チャプター2をやる直前に一回見たけど、パラベラム上映前に復習がてら見直した。
○作品全体
復讐という感情の泥臭さと闇の深さが全体を覆う。ウィックが着ているスーツを「スタイリッシュ」というならまだしも、この作品のアクションを「スタイリッシュ」と評するのは違う。見栄の良さを重視するのであれば関節をキメる必要もないし、ガラス窓から放り投げた挙げ句とどめの弾丸を額に打ち込む必要もない。ウィックががむしゃらに欲しているのは大事なものを奪うやつが二度とウィックに近寄ることができないという状況だけで、それだけを最優先にこなしている。そのためには泥にまみれようが自分を傷つけようが気にしない。純粋な復讐心が浮き彫りになるようなアクションがかっこよかった。
○カメラワークとか
・一時期流行った(今もか?)画面ブレが激しいアクションからの脱却を感じる。2014年、ボーンシリーズがやっと落ち着いた頃だったような。クラブハウスのアクションなんかはシルエット重視で見づらかったけど、全体的にアクションの組み立てをキチンと見せる画面が多い。
・ブギーマンと呼ばれたウィックが闇に「戻ってくる」描写が上手い。序盤の自宅での様子は薄い青色が基調で、かすかな平穏を感じさせる。妻が死んでもなお、なんとか繋ぎ止めている平穏、といったところか。クラブハウスやナイトプールのところからギラついた青と赤が入り乱れる。殺意をあらわにするウィックの表情にカメラが寄るときや、殺した瞬間なんかに赤色が強調される。
・顔に半分かかった影が良い。殺しから抜けたウィックとブギーマンとしてのウィックが存在しているかのよう。捕まったウィックがヴィゴと対話するシーンで、ヴィゴから「我々は過去に犯した過ちの報いをうける宿命なんだ」と言われた時、影に覆われたウィックの横顔が映るのが凄く良かった。
○その他
・ウィックの胸元に銃を持ってきて、構えながらガニ股で歩く動きが好き。かっこいいわけではなけど、そこにウィックというキャラクターの個性を感じる。三船敏郎の顎を撫でる仕草とか、そういう感じ。構える時に一度カチッと止まってタメツメ作ってる感じは千葉真一っぽい。
・ウィック(というかキアヌ・リーブス)のバラバラで少し長めの髪とか長身で細い感じとか黒に染まった衣装を見ると孔濤羅を思い出す。どちらもまごうことなき復讐鬼。
・マーカス役のウィレム・デフォーがかっこいいおじいさんになっていてとても良い。役回りもダンディズム。吹き替えで見たけど山路さんの声が非常にマッチしている。
・ラストのヴィゴ、終始抱いていた諦めのような感情が顕在化しているようでとてもいい。大ボスながら終始負けを悟っている感じ、珍しいキャラクターだと思う。凄く魅力的だった。
・唯一ボロクソに言いたいのはクソダサい字幕。もう単純にダサい。テンションが下がるダサさ。