「残念な一家」物置のピアノ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
残念な一家
「物置のピアノ」というタイトルから、3.11の悲しい物語と勝手に妄想してしまった。
先生のピアノが大好きだった生徒たちが津波で壊れたピアノが淋しく物置に放置されてるのを悲しんで皆でピアノを修理復元、今は亡き先生を忍ぶといったノスタルジー・ドラマ・・・。
ところがどっこいメインストーリーは姉妹の根深い対抗心、明らかに子育てに疎い両親、認知症の祖父などおよそ残念としか言いようのない家族の日常が淡々と描かれる。
ピアノが物置に追いやられたのは姉の歪んだ心故、妹もピアノを愛していたのだからそれを思えば普通の親なら部屋に残していたでしょう、こんな偏愛は納得しがたい、おまけに追い打ちを掛けるように火事まで起こすプロットは何たる非道、ピアノに罪は無いでしょう。
あの震災の爪痕がところどころ散りばめられるが、幼い弟の死因は震災でなく姉や祖父たちの心配りの欠如、多少トラウマにはなっているようだが逃げているようにしか描けていない。
心を閉ざした少女が好意を寄せるトランぺッターの少年、出会いと祭りのデート、そして別れはベタな青春ドラマ。唯一感情移入できるのはこの少年くらい、あとは残念な人達の品評会、特に姉と教師の描き方が誇張されていて腹立たしい。盛り上げの見せ場は演奏会、それにしても被災者を励ますコンサート企画なら何が受けるか演目位事前に調べるでしょう。
この稚拙で不可思議な脚本だがプロジェクトのホームページを読んで納得、震災の一年前から町おこしの映画として企画されていたそうだ、道半ばであの震災でとん挫したが、一層思いを強くし震災関係を被せる復興への応援映画として復活したそうだ。劇中でも風評被害への嘆きが描かれる、被災地を支援しようと言うメッセージは伝わりましたが、なんともちぐはぐな青春ドラマでした。