「何を主題としたいのか」マエストロ! kenMaxさんの映画レビュー(感想・評価)
何を主題としたいのか
オーケストラの作品というと、"のだめカンタービレ"ぐらいしか観ていません。
ただ、クラシックを聞くのは好きですし、クラシックが音楽の最高峰と思っています。
この作品では、一度バラバラになってしまった交響楽団が再編成されるのですが、
有能な奏者は他へ引き抜かれてしまい、残った者だけで構成しなくてはならない。
コンマスとしてまとめ役に奔走するバイオリニストと、
何処の誰だか分からない指揮者に翻弄される奏者達の成長と団結を描いています。
本番は無事に向かえられるのか。
思っていたよりも俳優陣が頑張っていて、実際に演奏している(指を動かしている)感じが良く出ています。
主演の松坂桃李はコンマスとしての立ち位置が分かりやすく、演奏中の表情なども上手く演じていました。
脇を固める俳優陣も舞台出身者が多く、練習場での演技などは舞台っぽい撮り方が多かったので合っていました。
西田敏行はもう少しコミカルな役なのかと思っていましたが、真剣に音楽とは何なのかを語りかけてきます。
そして注目は、miwaです。
演技はともかくとして、キャラクターが際立っていました。
方言とあの声としゃべり方で萌えを刺激する良い役です。
奏者達の現実的な境遇や、オーケストラが完成されていく過程がとても分かりやすく描かれていて、
今まであまり気にかけていなかった楽器の存在感などを知る事が出来る作品だと思います。
オーケストラというと音ばかりに気を取られがちですが、
奏者も人間ですから様々な思いを持ちながら演奏に向かっていくのだと感じさせられます。
個人的には、世界で一番美しいのは音楽だという部分を良い意味で突き詰めて行ってもらいたかったのですが、
この作品では音楽と死を結びつける表現が多く出てきます。
主人公と父親、少女と家族、指揮者と妻。
ハッキリ言って死を絡めすぎです。
特に少女と家族についての演出には閉口しました。
どんなフルートの音色を聴かせてくれるのかと期待感が大きいシーンだっただけに、
それを絡ませてくるのかとガッカリです。
それで感動させようという狙いだと思いますが、浅はか過ぎます。
原作が漫画なので、もっと長いストーリーの中に転々と置かれた話を
映画(短い時間)に凝縮したらこんな感じになっちゃったのかもしれません。
バラバラだったオーケストラがラストに奏でる音には感動的なものがありますが、
ストーリーは楽しめませんでした。