「ありがとうの姉弟」小野寺の弟・小野寺の姉 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ありがとうの姉弟
似ても似つかぬと言うか、何ともアンバランスな姉弟。
姉・片桐はいり、弟・向井理。
しかし、舞台でも同役を演じたからか、不思議と段々しっくり見えてくる。
絶妙なやり取りと言うより、ちょうどいい感じで肩の力が抜けたナチュラルなやり取り。
ほっこり微笑ましく、姉弟を見ているだけでも面白い。
早くに両親を亡くし、二人で暮らしている小野寺より子と進の姉弟。
しっかり者で明るい姉と内気でちょっとヘタレな弟。
姉弟仲はいい。って言うか、仲良し。
仲がいい分、よく喧嘩も。
こういう時、気まずいもんだ。
同じ家に二人で暮らしてるから、気まずくなっても顔は合わせなくちゃならない。
でも、暫くすると、自然と仲直り。「ご免」「悪かった」となかなか口に出せなくとも、何か些細なきっかけで。
自分も数年前に親を早くに亡くして今は弟と二人で暮らしてるので、何か分かるなぁ~と多々あった。
で、そんな小野寺姉弟の生活に出来事が。
まず、進は失恋を引きずっている。
ある日、誤送された郵便物を届けに行き、その届けた先の女性・薫に一目惚れ。(本作の山本美月がメチャメチャ可愛い!)
その後偶然に再会、絵本作りをしている薫の仕事を手伝う事になるのだが…、明らかに薫は進に好意を抱いているのに、その対応のダメっぷり…。ああ、焦れったい!
眼鏡店勤務のより子は、取引相手のセールスマン・浅野の事が気になっている。
が、自分は容姿に自信無いし、浅野は及川ミッチーだし、向かい店の若い女性店員は積極的に浅野にアプローチ。でも浅野は、あの女より自分とよく話をしてくれる。
姉弟揃って訪れた恋のチャンス。
すったもんだあって、奇しくもクリスマスに、姉弟それぞれ“デート”の約束。
結果は…。
これはかなり切ないが、劇的なハッピーエンドより良かったかも。誰の身にも起こり得そうな、身近に感じた。
劇中薫が書いた絵本の話がしんみりと良かった。
困ってる人を見かけたら親切にする犬が居て、ある日寂しそうな老人と出会い、その老人の家を花いっぱいにしてあげるも、老人は先日亡くなった妻の匂いが消えてしまった、と…。
優しさが時に相手を傷付ける事もある。
それはまるで、この姉弟の事を表しているような気がした。
例えば、進の失恋した理由。それは…。
それをより子が知ったら重荷でしかない。
お互い思いやり過ぎて、ちょっと傷付けたりして、でもやっぱり思い合って…。
姉弟二人。
調香師の進が探していた“ありがとうの匂い”。
すぐ傍にあった。