「上手く作られているけれど」複製された男 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
上手く作られているけれど
どんでん返しというわけではないが、ちょっとした秘密がある作品はそれなりに多い。それを大きく分けると、作品内で秘密がはっきりと明かされるものと、そうでないものに分けられる。本作は明かされないパターンの作品だった。
それで、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督らしい力強い構図と音によって、不思議で不気味な世界を楽しむ事はできたのだが、意味がわからなかった。
あまりにもわからなかったので解説されたものなどを読み、なるほどなと納得して、もう一度流しで観てみた。
カオスとは見解読の秩序である、とは作品冒頭の言葉だが、どうやら私は混沌とした状態を楽しんでいたようで、解読され秩序ある物語に変わったとたんに面白くなくなってしまった。
もう一つ作品内の言葉で、一度目は悲劇だが二度目は笑劇とある。まさにその通りで、スリリングで緊張感があったはずのものが、酷く馬鹿らしいコメディのように感じてしまったのだ。
これも全て製作者側の思惑通りなのだろうけど、私にはハマらなかった。
意味ありげに何度も登場するクモが作品の秘密と直接関係なかったのも悪かったように思う。どうしてもクモに意識を持っていかれて、そればかり考えてしまう。
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