「美と儚さ。」グレート・ビューティー 追憶のローマ ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
美と儚さ。
人生枯れ始めの入口で、享楽的な日々の暮らしに虚無と倦怠を抱き始めたジャーナリストの男。パーティーやセックスに夜毎興じ、それらを楽しむ振りはすれど、心は満たされず。若者のような遊びを続ける年でもなく、その盛りも過ぎている。けれども正体の分からぬ「何か」を得んとする為、ローマの街を一人彷徨い、ローマの街にしがみつく。渇望せずにはいられぬ。その「何か」を求めずにはいられぬ。
皮肉とユーモアを盾に、感性を武器として生きてきた男は、友人知人の人生や生活に干渉し、酒を飲み、またパーティーへと興じる。
そんなある日、若かりし頃に付き合っていた初恋の女性が死んだという一報が入り、彼は心を激しくかき乱す。だが、そこから、生きるテーマがぼんやりと、その目的や照準が、何となく定まりだす。定まりだして、動き出す。再びローマを彷徨い、友人知人にちょっかいを出し、再びローマにしがみつく。
我々庶民の生活とは凡そかけ離れたセレブリティの生活を、男を、映画はただただ映し出す。
美しいローマの世界を、カメラは奔放に駆け巡るのだ。市井を映し出し、情景を映し出し、そして男の行動に寄り添う。
果たして、この男に共感が出来るのか?となると、出来る部分もある。出来ない部分もある。いや、寧ろ共感などしなくてもいいのではないか?という気もしてくる。見方によっては、彼はただ贅沢な暮らしをしながら「虚しさ」を呟くだけのクソ爺だ。ある一方では、何かひとつの高みに登ろうとする聖者にも見える。
きっと、答えはないのだろう。ローマだけがそれを知っているのだ。
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