劇場公開日 2015年11月28日

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「自分たちが守ろうとした古代文明を身をもって体感。それでもあなたは活動家を続けますか。」グリーン・インフェルノ レントさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5自分たちが守ろうとした古代文明を身をもって体感。それでもあなたは活動家を続けますか。

2023年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

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生半可な気持ちで環境活動をやろうなんて人間にその覚悟を問う問題作。ネーチャリング番組のような絵作りが皮肉が効いていてよい。

「食人族」をモチーフにした作品と聞いておバカ映画を想像していたら、意外と細かく伏線が散りばめられたしっかりした脚本で、前半は違う映画を間違って選んだのかと思ったくらい。

主人公の女子大生ジャスティンは未開の部族の間で未だに慣習として行われている女性虐待を授業で見せられ、これに触発され活動家たちのグループに加わることに。
過激な活動家アレハンドロに男性としての魅力を感じつつ、その熱意にもひかれてゆく。しかし、実際は国連関係者の娘である自分が初めから利用されていたと知りショックを受ける。確かに社会経験の浅い彼女には戦略家の彼のやり方はショックであっただろう。だが、このアレハンドロ、戦略家ではなく策略家であることが後にわかる。

帰国の途につくため彼らが乗った小型機がエンジントラブルを起こす。着陸した場所は彼らが救ったはずのサマ族のエリアであり、実は彼らは食人の種族だった。

彼らの集落に無理矢理連れていかれたジャスティン達が見たものとは。

ご丁寧にも殺した獲物の亡骸が飾り付けられた村はさながらホラーテーマパークのよう。主人公たちは恐怖のライドを体感する。
ここから作品のトーンがガラッと変わる。さっきまで主人公に淡い思いを抱いていた青春キャラのおデブちゃんはいきなりすしざんまいのマグロ解体ショーのごとく、あっという間に観衆の目の前でさばかれ肉塊と化してゆく。

村人は子供からお年寄りまで久々のご馳走をほおばり、自然と笑みがこぼれる。開放的で美しい自然に囲まれたとても良い集落だ。食べてるものが豚の丸焼きだったなら何の問題もないだろう。しかし、囚われの身の主人公たちにとってここは地獄でしかない。そんな主人公達が感じる恐怖をまさに他人事として観客はそのスリルに酔いしれる。

ただ本作、最初の解体ショー以降はあまりこれといったゴア描写もなく、主人公達の絶望感もあまり感じられない。その後の脱出劇も実に凡庸な展開でちょっと物足りなかった。

どうせならもっと悪乗りして観客の想像の上を行ってほしかったかな。唯一、助かったジャスティンがサマ族が友好的な部族だとかばってたところから、国連がお詫びのしるしとして彼らを国連会議場に招待する。そこで会議場の国連要人たちをサマ族たちがいっせいに襲いかかり食いまくるという地獄絵図を描いてくれたらかなり面白かったのでは。

続編を予感させるラストだっただけに次回作は「食人族、都会に現る」みたいな企画でどうだろうか。

はたして本当の悪は人間を食べる彼らか、それとも自然を破壊し続ける文明人の方か。ジャスティンの親友ケーシーは言う、「偽善者め」と。結局はビッチな彼女が一番物事をわかってたというオチ。

レント