「演奏シーンがとてもよい」はじまりのうた sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
演奏シーンがとてもよい
冒頭のライブハウスのシーンが、別視点で何回か描き直される度に、物語に深みが増していくシナリオが上手い。
もともとのグレタの歌自体がいいのに、その後の客の反応のイマイチさという演出には、ちょっと違和感があったが、確かにダンの脳内アレンジが加わった方が圧倒的に良くはなったので、そこは、物語として「プロデュース」の方向に進みますよと明示したかったのだろう。
「俺には才能を見抜く力がある」と思いながらも、ここ数年の失敗で自信を失いつつあったダン。観客は、その立ち直りに、チームの一員として見守っていくような立ち位置に置かれる。そして、ダン自身、危うい場面はありつつも、過ちは犯さないので、清々しく観終えられるつくりも上手いなぁと思った。
…とここまで書いてきて、ちょっと引いた視点での文章になっているのに、自分でも驚く。
観ている最中、ライブレコーディングのアイデアにワクワクしたり、娘のギターの入りが、ハウリングからのディストーションを効かせたストローク一発だったことに痺れたりして、観終わった後も「あー面白かった」と思っていたのだが、尺の関係もあるだろうけれど、「都合よく綺麗にまとまりすぎ」と、ちょっとだけ思ってしまったのかもしれない。
でも、全体として、決して悪い映画ではない。
自分のプレイリストを晒すのを恥ずかしがるシーンとか、それを晒し合ってもいいと思える関係になり、更にそれを晒し合うことでより理解を深め合うところとか…。
音楽の力を改めて感じさせる演出と同時に、ダンスシーンや単なる街歩きのシーンが、とっても官能的に感じられた。
それから、2人でちゃんと両耳でイヤホンを聴くところとか、「花束みたいな恋をした」を思い出して、「これだけで音楽を大事にしていることが伝わるよなぁ」とほくそ笑んだ。
もちろん、アダム・レヴィーンのライブシーンはとてもよかった。どんなに顎をしゃくられても、あそこにしゃしゃり出て行かれる訳がないという説得力があった。
コメントありがとうございます。
都合よく綺麗にまとまりすぎ、は私もそう思いました。
ライブレコーディングのシーンがこの映画の見せどころで、他の部分は正直、大分退屈でした。スティーブの立ち位置やいろいろ、グレタに都合よすぎ。そしてグレタはスティーブを都合よく使うだけの自己中に見えます。監督の人物造形の浅さが目立ってのれませんでした。