「正義はないけどそれでも戦う」チョコレートドーナツ だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
正義はないけどそれでも戦う
かなしいはなしだから、よかった!ってゆう感想はふさわしくないけれど、でもよかった、と言いたくなる感じ。(どんなんや?)
ルディがなぜ一瞬でマルコに愛を注ぐようになったかは、描かれてないけれど、想像ができる行間があったように思う。マルコを見つめる とルディの瞳が潤み、胸が苦しくなった。
ポールの家で初めて寝る晩、マルコにお話をして、とせがまれて、ルディが戸惑いと喜びがまじった表情になり、瞳が潤んで、瞬きをしたところ。あのシーンが切なかった。そこからほぼ泣きっぱなし。
幸せも束の間、ポールの同僚?上司?のパーティでのこわーい視線、そしていきなりルディ襲われる…
三十年ちょっと前まで、あんなにも同性愛者は犯罪者みたいな扱いされてたんや、と改めて思った。
怖いのは、判事も相手の弁護士もポール上司?も、自分の持ってる常識に疑いをかけらも持っていないこと。その常識は裏返せばただの偏見で、その常識からはっする言動は差別でしかなくて。自分が正しいと全く疑わないことは悪だと、思った。
程度はちがえど、今の世もそれは同じだなとも。
救いを感じたのはマルコの学校の先生と、裁判の途中でマルコに面談をした女性が、どちらもマルコはルディとポールといたがってるし、ちゃんとした養育ができるといってくれたこと。ほら、マルコに会えばそう思うのよ。みたらわかるのに、このわからんちんめ!と、相手側弁護士にむかってスクリーンのこっち側からにらんでやった。届かんけども!
ルディの歌はどれも胸に響いたし、マルコの笑顔や泣き顔に切なくなった。ポールもいいやつやのに。結末はあまりにも悲しい、憤りを感じるもので、今でも思い出しては怒りがわく。悔しい。悔しい!ひどい!マルコを返せ!
そこで、黒人の弁護士がゆってた言葉が、強く胸に響く。
正義なんてないけどそれでも戦う、と。
ほんとうにそうだなと思った。
黒人の公民権運動も、なにもかも、今までにあった差別はみんな、正義などない絶望から、それでも戦い続けた結果なんだなと。
ポールとルディはこの後も一緒に過ごしたのかな?差別や偏見に苦しみながら二人で戦い続けたのかな?そうであってほしい、そして幾許かの自由をつかんだのであってほしいと、願った。
きもちよく泣ける、きもちよく感動できるいわゆるいい話ではないけれど、素晴らしい感動作だと思います。