「脚本が悪いのは言うまでもないが...」ジョーカー・ゲーム 伏兵SQUADさんの映画レビュー(感想・評価)
脚本が悪いのは言うまでもないが...
監督が入江悠であると知って非常に楽しみにしていたのだが、脚本が渡辺雄介であると知ってからは期待が絶望に変わったのも事実。単純にストーリーがこちら側の想像の範囲内から一切はみ出してくれない。20世紀少年やガッチャマンにしてもそうだが、こんなレベルの脚本家が「大作」映画に重宝されている日本映画界に嫌気が差す。
序盤、結城中佐がコーヒーを飲むのに対し、敵側が紅茶を飲むなど、映画的な対比演出もあるにはあるが、全体的な映画のトーンやテンポのせいで台無しである。中盤と乱闘シーンで敵側スパイが梨をかじる演出なんかは本当に寒い。センスを疑う。
映画秘宝で監督が「終盤の時計台はBTTFオマージュだ」とか「日本版ミッション・イン・ポッシブルだ」とか言っていましたが、見る側のリテラシーがそういった過去の名作公開当時とは比べものにならないぐらい上がっている現状では無配慮にそういったエッセンスを詰め込むのは危険だと思う。もちろん、自主制作でコツコツやってきた入江監督がようやくビッグバジェットな映画を撮れるようになったという背景を考えれば、様々なエッセンスを詰め込みたくなる気持ちもわからないではないが、映画そのものの評価とこれは別物である。
ルパン三世的なことがやりたいなら、全体のトーンをもうすこし明るくするべきだ。全体を通してギャグは全くないのに、主人公たちがとる行動は非常に愚かなため、次第に見る気が失せてくる。
「そんなこと考えずに楽しくみればいいのに」という人がいるがその指摘は全く正鵠を射ていない。プロならば見ている人にそういうことを考えさせない映画を作るべきです。
おそらく本作は興収次第で続編が作られるでしょう。1作目が次作への壮大なネタフリであるとするならば、まだ次回作には希望が持てる。
入江監督は渡辺氏と同年代だったから仕事がしやすかったとおっしゃっていますが、次作があるなら彼とは手を切るべきです。