「欧州の黄昏を見届けたホテル」グランド・ブダペスト・ホテル talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
欧州の黄昏を見届けたホテル
アンダーソンの映画は「フレンチ・ディスパッチ」しか見ていなかったけれど「グランド・ブダペスト・ホテル」をやっと見ることができて嬉しい!とても面白くて笑えて「これでもかシンメトリー!」も楽しめてゴージャスでした。ホテル内の無人の長い廊下を見るだけで胸がときめく。
歴史ある高級ホテルはスイス。この映画で大活躍のコンシェルジュ・ネットワークでもスイスを感じた。ソレンティーノ監督の「グランド・フィナーレ」も、ダニエル・シュミット監督の「季節のはざまで」も伝統あるスイスの保養地&ホテルが舞台だった。ヨーロッパ各地のセレブ常連客が来るから英語にドイツ語にフランス語。
そしてゴージャスな俳優たち。冒頭でいきなり老婆役のティルダを見てびっくり!シアーシャ・ローナン、灰かぶりならぬ粉かぶりで、美しいお菓子を作る美しいアガサ、動きも表情もおとぎ話の主人公のようだった。レァ・セドゥはアンダーソンの映画ではメイドとか守衛がよく似合う。カイテルに会えたのも嬉しい!スキン・ヘッドで上半身だけだがまた裸だった。カイテルの裸姿にもう慣れて親しみすら覚える。
そして凸凹コンビ、ロビー・ボーイのゼロと彼を見いだしたムッシュ・グスタヴ。戦争孤児で移民のゼロは、詩と絵画とル・パナシュの香りを愛するエレガントなグスタヴからたくさんのことを習う、「アガサを口説かないで下さい」と何度も言いながら。レイフ・ファインズしかできない役でした。常連のノートン、相変わらず素敵。軍服姿のせいか元々の顔のせいか、ノートンもシンメトリーだなあと思った。
登山電車のオモチャ感と同じで余りに可愛くて笑ってしまったのが、雪上アクションの特急スピード感!ゴンドラ・リフト2台を空中停止させての人移動もドキドキ。SSのロゴも雰囲気変えつつ絶対あれだとわかる。例の絵画「少年と林檎」の後に掛けたのはエゴン・シーレ的絵画で余りに真逆で笑えた。ウェス・アンダーソンのマニアックで粘着的職人気質には敬意を払うしかない。
コメントありがとうございます😊
肩紐がズレていたか何かで、次のシーンで綺麗に結び直されているとか、そんなグーフだったと思います。でも遠い記憶なので…🙃