劇場公開日 2014年6月6日

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「クスッと笑えて、最後は深い余韻が残る」グランド・ブダペスト・ホテル 軟水さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0クスッと笑えて、最後は深い余韻が残る

2024年1月3日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

悲しい

学生だったころにテレビでたまたまみた『グレーテルのかまど』、ちょっと変わったお菓子をつくる番組で『グランド・ブダペスト・ホテル』の劇中に出てくるお菓子を扱った回があった。
奇抜な紫の服を着たチグハグな男二人が右往左往する映画のワンシーンがなぜかずーっと印象に残っていて、数年を経てついに観ることができた。

老人の独白から始まるとあるコンシェルジュとロビーボーイの物語。殺人事件に巻き込まれた二人のドタバタ劇が軽快かつコミカルに展開されていく。恐ろしい状況でもクスッと笑えるシーンが多く、突っ込みたくなるほど間抜けに真面目で…とにかく変わってて…。
事件は無事解決し二人は強い絆がうまれ友となり、ロビーボーイは愛する人と結ばれて最後はハッピーエンド。
けれど…。

かつての栄華が過ぎ去ったグランド・ブダペスト・ホテルで自分の過去を語る老人はかつてのロビーボーイその人だった。独白の中で見た若く純真なかつての面影は跡形もなく消え、まったく変わった老いた深い孤独をたずさえていた理由が明かされる。

最後はただただ切なくなりました。
後悔や未練その悲しみに終わりはない。
納得できることもなく…
消したくなることもある、けどその記憶の中に確かに良かった瞬間がある。
悲しみを忘れるということは、その人を愛した気持ちまで忘れるということ。

戦争の足音が聞こえてくる中で幻を維持してくれた心根の優しい友。共に天涯孤独貧しい同士でやっと手にした愛する恋人。

痛みを伴う記憶を愛する象徴がグランド・ブダペスト・ホテル

かつて繁栄を極めた、今はすでに廃墟と変わらぬ姿になってしまったそのホテルがとても特別で愛おしく感じた

深い余韻が残る映画
この先ずっと思い出すと思う

軟水