「重いテーマをコミカルに仕上げたチグハグ感」天才スピヴェット ルナルナさんの映画レビュー(感想・評価)
重いテーマをコミカルに仕上げたチグハグ感
登場人物は、脇役に至るまでユニークで個性的。軽快なテンポと、絶妙な演出。そして何と言っても、主人公のスピヴェットを演じたカイルくんが、賢くて可愛い。
…けれど、見終わった後、面白かった!という充足感や、深い感動を覚えないのは何故だろう?そのことをずっーと考えてみた。
子どもの頃、父親が溺愛していた兄を不慮の事故で亡くし、父との確執がその後の人生に大きな影を残す「ウォーク・ザ・ライン」。幼少期に、銃の暴発により視力を失った主人公の人生を辿った「ミルコのひかり」。交通事故で突然、兄を失い、その影を求め続ける少年の姿を描いた「ヒア・アフター」。
いずれも、深刻なテーマを真摯な姿勢で描いていて、深い感銘を覚えた。
そう、この映画の、バラバラな家族に追い打ちかけ、スピヴェットが一人で旅立つ原因となった、銃の暴発による双子の弟の死が、コミカルなタッチとあまりにもそぐわず、何ともすっきりしないのである。
原作があるから仕方ないのだが、もっと子どもらしいキッカケで旅立ち、「ホーム・アローン」みたいに笑えて、ほっこりできる作品で終わらせてくれたら、楽しい気持ちで鑑賞できる一本となった気がする。
それでも、このコミカル感の中でも、テーマの本質を演じ抜いているヘレナ・ボトム・カーターは、さすがである。
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