劇場公開日 2014年4月19日

「歪な家族の関係性を通した個々の内面描写が丁寧。」ファイ 悪魔に育てられた少年 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0歪な家族の関係性を通した個々の内面描写が丁寧。

2014年5月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

怖い

良かった。

正直、話自体の意外性は設定の割には乏しいのですが。
その設定の枠内で描かれる、息子ファイと父親達の関係性や両者の想いが丁寧に描かれていた点に好感を持ちました。

まずヨ・ジング演じる主人公ファイ。
理由や経緯も知らぬまま重犯罪者である父親達と当然のように生活を共にする。
育てられた異常な環境が、彼を歪で何処か虚ろな存在に。
同時に家族との交流の中で屈託なく笑う、という普通の側面も。
ヨ・ジングの表情や仕草がその不安定さをよく表現しており物語にグッと惹き込まれました。

また父親達も良かった。
他人を殺害し金を奪う一方で誘拐した他人の子を育て可愛がる。
実子のように可愛がるファイに犯罪技法を教えて犯罪の片棒を担がせる。
矛盾した想いと行動、その複雑な性格がファイとの接し方を通して描かれています。

父親各人は担当作業が異なるように性格も異なりファイへの想いも微妙に違います。
序盤の日常シーンの端々からその違いが描かれるため、5人いる父親達が埋没していません。
人物説明が丁寧であり、その点が中盤以降の展開にも寄与していたと思います。

特に、集団のリーダーを務めるキム・ユンソク演じるソクテ。
彼が胸に秘める息子ファイに抱く共感や愛憎入り混じった想い。
その想いの強さ、ひいては一方通行感には圧倒させられました。
キム・ユンソクの“顔力”あってこそ成立した人物像だと思います。

歪な家族の関係性を通して個々の内面を丁寧に描いた本作。
ファイとその家族“以外”の登場人物達が若干の置物感あり、話の展開も設定の割に意外性に乏しいですが。
中心人物達の人物描写、それに寄与した役者陣の凄みある演技は見物。
オススメです。

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Opportunity Cost