「多彩で多層な学園ホラー」学校の怪談 呪いの言霊 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
多彩で多層な学園ホラー
6月公開の話題作『呪怨 終わりの始まり』でも
メガホンを取った落合正幸監督の学園ホラー。
落合監督のホラー作品といえば『感染』
『シャッター』辺りが有名かしら。
(『シャッター』はアメリカ資本の
映画にしてはJホラーの雰囲気が濃厚)
あと、『世にも奇妙な物語 映画の特別編』
の秀作ホラー編『雪山』も彼の監督作品だ。
あのスコップのシーンは怖かった……。
が!
個人的には本作、落合監督のホラー映画作品
では最も怖かったのではと感じています。
ただ、物語で散りばめられた謎の多くは
かなり曖昧なまま終わってしまうので、
『物語をスッキリ理解して劇場を出たい』
という方々はけっこう不満を抱くかも、
とも事前に付け加えておこうと思う。
* * *
本作で特筆すべきは恐怖シーンの多彩さ。
こっくりさん、体育倉庫の暗がり、
保健室のベッド、大鏡、個室トイレなど、
学校の怪談でお馴染みのモチーフを活かした
恐怖シーンは非常にバリエーション豊か。
観客に緊張を強いる恐怖演出も手堅い出来だ。
保健室のベッドのあの密閉感はオソロシイ……。
わざと空間をずらしたような人の声や、
ノイズミュージックのような不穏な音楽も怖い。
終盤の惨劇も……やや演出がクドいが……悪夢を
延々と見せつけられているような不気味さが○。
な に を み た の
という言葉も、その意味の不明瞭さも手伝って
なかなか耳を離れてくれない。(←基本ビビり)
* * *
語り口の面白さも魅力だった。
母を亡くした若い女性。
怪談話で盛り上がる高校生たち。
恐怖映像を撮ろうと校舎に忍び込む悪ガキ共。
その悪ガキに付き合わされる女の子1人。
学校というひとつの舞台で同時進行する
重層構造の恐怖。
物語の構造はなんとなく予測できたのだが、
放送室のシーンでちょっと驚かされ、
あぁなるほどねと安心しかけたところで
更に冷や水をぶっかけられるような衝撃展開……。
先述の通り、物語の謎はほとんど投げっぱなし
で終わってしまうのだが、その謎をあれこれ
推察してみるのも楽しかったりする。
(長くなるので書くのはやめとく)
* * *
難点は、ありとあらゆる怪談話やアイデアを
がつがつと詰め込んでいるので、恐怖シーンに
デジャヴを覚える場面が少なくない点。
それに、物語の焦点(結局何を見せたいか?
という点)もボヤけて見えてしまったのは
結構痛い。
だが、アトラクション的なコワ面白さは十分。
まるで巨大なお化け屋敷をさ迷っているか
のように恐怖シーンが連続し、飽きがこない。
という訳で、観て損ナシの3.5判定。
判定4.0でも良いくらいかも。
いやあ、監督交代で少し不安はあったのだが、
6月の『呪怨』新作がちょっと楽しみになった。
恐怖演出については大丈夫そうなので、
あとは物語がボヤけなければ良いのだけれど。
<2014.05.23鑑賞>
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余談:
主演は『東京女子流』という
アイドルグループのメンバーさんだそうで。
ホラー映画の演技としては可もなく不可もなく
という感じだったが、演技の良し悪しを
語る以前に、この年代のアイドルとなると
もう誰が誰だか顔の見分けがつかなく
なってきている自分(爆)。
三十路手前にして大丈夫か、僕の脳ミソ。