「経験したことのある心痛」思い出のマーニー Kさんの映画レビュー(感想・評価)
経験したことのある心痛
久しぶりのジブリ。やはりジブリは難解。「思い出のマーニー」はもはや子供向けの作品ではなかった。
主人公がいつも円(縁?)の外にいると感じているってどういうことだろうと思っていたけれど、物語の最後にはなんだかわかった気がした。
自分が必要とされていたり、どこかに属しているという感覚かもしれない。自分に自信がなくなって、自分だけの秘密を抱えて自分の中に自分で自分だけが属しているスペースを作って安心しようとする。そして他人に対しては攻撃的になったりする。
杏奈はおばさんがお金をもらっていたことが原因で不安定な精神状況になったのではない。彼女がただただ周りよりも大人になるまでのスピードが速かっただけだ。彼女自身が大人になっていく過程でこの悩みは避けられない。全員が経験するわけではないこのような人間的成長のための試練は人を目覚ましく成長させる。個人的には人生の中で思い返したくないパートであるが、あの期間なくして今の自分はなかったと確信できる。
クライマックスで杏奈をサイロに置き去りにしたマーニーに対し、「なんで私を置いて先に行ってしまったの」と叫び、マーニーも「あなたを愛している」と叫び返すシーンは全てを見終わってから考えると全く違う意味に感じ取れ、さすがジブリといったところ。ジブリの世界観も相変わらず素敵であった。
話の細部まで考え込まれ、作り込まれているところに世界で戦っていける理由があるのだと思った。ジブリはテーマが難しすぎたり、全員が理解できるわけではないことが多くそれがジブリの人気低下につながっている。しかし、大衆受けする映画を作れというのではなく、もっと多くの人がジブリを見て何か感じ取ろうとしたり、自分の一本を見つけて欲しい。
ジブリが映画界の先頭の方で走り続けていることを強く感じた。