「3回みたけど、手は動いていないからね。それが演出家の手腕だよ。」ある過去の行方 マサシさんの映画レビュー(感想・評価)
3回みたけど、手は動いていないからね。それが演出家の手腕だよ。
「下で寝て良いって❤ 理由ならあのヒゲ男に聞いて」と言うセリフ
「あの男が好きなのはあんたに似ているからよ」
と言うセリフから、同じ様な髭面。
この女性の軽率な判断がうかがえる。
「失敗した結婚を取り戻すためだろ!」
「でも、妊娠した」
「あれは事故だ!」
「まだ、中絶もできるわ」
「あの男が忘れられず、新しい人生を始めてウヤムヤにしたいのだろ!」
「もう、過去の事は良い。つまり、お腹の子の事だが、なかった事に出来ないか?」
「できる?」
「その方が良い!」
「出来なかったら?」さて、その後場面が変わってタバコを深々と吸う。
つまり、
中絶する以外ない。しかし、家族は見事に崩壊して、髭面の自己本位な男は過去に囚われて、絶望的な状況にこだわり続ける。
実にドロドロした崩壊劇で結末が締めくくらず、余韻を残して崩壊する所のが良いね。
そして、
最後の最後まで、男は分からぬまま終わる。その演出が鳥肌モノ。
カトリック教徒の国。自殺、中絶、浮気はご法度。
そもそも、避妊具を使わずまぐわう事をフランスの男はしない。フランスのハード・コアな映画(だけは)でも避妊具はつけている。ドイツとかイタリアは違うし、日本だとクリームパイとか中⭕️しとかなんとか。こんな男、ヤマトンチュにはいるかも。
この映画はイラン人への差別。不法就労、国際結婚の難しさ、女性への差別を描いた映画だと思う。それと子供に対する暴力ね。
イラン人の監督に言われていては、民主的な国々も世話がないね。でも、この演出家の疑問は分かるよ。
2014年と言えば、フランシスコ教皇がコンクラーベして一年目。少しづつ中絶の話も理解されてきたとは思うが、フランシスコ教皇は中絶を賛成してない。しかし、そうじゃない事もあるのを我々は知るべきだと思う。
婦人の再生を願う気持ちに変わりないが、自殺を図ったこの婦人がこの状況では、生き返るべきではない。ありもしない未来の話はややこしくなるばかりだし、この婦人に幸せが訪れるわけではない。
問題なのは、この髭面男が自分の責任で二人も殺してしまったと言う事実に向き合ってない事だ。
寝てしまったので二回見た。最後は3回見た。動いていない。でも、それで良い。最高のバッドエンド。「殺しが静かにやって来る」を上回るね。