劇場公開日 2014年5月16日

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闇金ウシジマくん Part2 : インタビュー

2014年5月16日更新
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山田孝之×綾野剛「闇金ウシジマくん Part2」で意識を強めた“起爆剤”としての熱量

「空気がふわっと混ざるような感じ」。山田孝之は綾野剛と初めて顔を合わせた時の印象をそんな言葉で言い表した。「盟友」「同志」――2人が肩を並べる姿に、そんな“男の熱い絆”を思い浮かべていたが、山田の言葉で思いを改める。この2人、俳優としての互いを深く愛する恋人たち、いや長年連れ添った夫婦のようでさえある。(取材・文・写真/黒豆直樹)

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「クローズ ZERO II」以降、幾度となく作品を共にし、プライベートでも付き合いの深い2人だが、「闇金ウシジマくん Part2」で再び顔を合わせた。さらに現在、撮影が進む園子温監督の「新宿スワン」では、本作とは逆に綾野が主演を務める形で共演を果たしている。出会い、共鳴、世代……いくつかのキーワードから邦画界に欠かすことのできない2人の若きカリスマの肖像が浮かび上がってくる。

「闇金ウシジマくん」は、法外な金利で持たざる者に金を貸し付ける違法な“闇金”の姿を軸に社会を切り取ったまさに現代のピカレスクロマン。深夜ドラマ、劇場版、連ドラ「Season2」、そして本作と4年にわたり、山田が主演として強い思い入れを持って丹念に育ててきた。その作品に綾野を迎えることを山田は誰よりも喜んだ。「純粋に嬉しかったですね。この『ウシジマくん』で剛を迎え、今度は『新宿スワン』という剛の主演作に自分が参加する。新宿周辺を描いた作品で立て続けに共演するというところでも面白いつながりを感じています(笑)」

共演した作品のみならず、互いの出演作は何も言わずとも常にチェックしている。だからこそ、綾野にとっても本作への出演には特別な感慨が伴った。「シーズン1の時に孝之から『もうすぐ撮影が始まる』という話を聞いて、『いつか一緒に出来たらいいな』と思っていたんです。作品も孝之が演じるウシジマも大好きだったし、僕にとって断る理由がなかった。このタイミングで参加できてよかったです」。

綾野が演じるのは、“情報屋”でウシジマの幼なじみである戌亥(いぬい)。決して馴れ合いではなく、普段からの距離感が、ウシジマと戌亥の関係性を出す上でも確実にプラスに働いたと山田は断言する。「ドラマでの最初の共演シーンが駄菓子屋の前のベンチで会話するシーン。並んで座ったまま、互いに顔を見ずに正面を向いたまま喋るんですけど、そこで『初めまして』の関係の方と一緒にやるとなると、昔からのなじみの空気感を出すためにいろんなコミュニケーションが必要になるけど、剛とはそれが一切要らなかった。顔を見ずに正面を向いたままでも、綾野剛という俳優が作る戌亥が言葉を発する時にどんな表情をしてるのかが想像がつきましたから」。

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綾野が、テレビ画面を通じて山田孝之という俳優の存在を“認識”したのはドラマ「ランチの女王」。奇しくも本作の山口雅俊監督がプロデュースを務めた作品だ。「ひとりだけ浮いてるヤツがいた(笑)」。山田の「浮いてはいないよ! ちゃんとなじんでいたよ(苦笑)」という抗議を意に介さず、言葉を続ける。「独特の人だなと思いました。その後の『白夜行』もすごく好きだったし、思った通りだなと感じさせつつも毎回、どこかで裏切ってくれるんです」。

それから数年を経て、冒頭でも紹介したように、2008年の「クローズZERO II」撮影現場で2人は初めて顔を合わせた。山田の脳裏には、そのときの思い出が忘れられずに残っている。「精神状態がすごく近いのを感じましたね。どんな状態かと具体的に説明は出来ないんですが。現場でパッと顔を合わせた時に『自分と似たヤツがいるな』というのをひしひしと感じていました」。

以来、公私にわたり2人が親交を深めてきたのは周知の通り。改めて問う。綾野からみた“俳優・山田孝之”の魅力とは。「作品によってめまぐるしく変わる姿を見ると、演出家と一緒に作品をつくっているんだなというのを感じます。僕には上手い下手なんて分かりませんが、好きなんです、孝之の芝居が。それは彼が持っている人間としての本質的な部分なのかもしれないですが。それから、自分を軽々しくふるいにかけたり、天秤で測るようなことをしない。基本的に自分の存在なんてあってないようなものだという思いがぼんやりと灯っているのを感じて、共感もするし、信頼できるなとも感じています」。

一方の山田は、この5年余りの間、綾野が作品ごとに輝きを増し、周囲の注目を集め、脚光を浴びていくさまを目の当たりにしてきた。そんな山田の目に映る綾野剛はどんな俳優なのだろうか。「やはり当時とは立場が違うし、何より周囲が変わりますよね。そうすると、いままでとは違う役柄も来るし、見せたことのない表情を見せる場が出てくる。例えば朝ドラ(『カーネーション』)で、これまでやってきたことと全く違うものを求められたり。そういう変化がどう剛になじんでいくのか? そんなことを考えながら見ていたんですが、大事にしている部分は変わってないと思います。つい最近『そこのみにて光輝く』を見たんですが、こういう作品、キャラクターや空気、世界観は絶対に自分の中に残していかないといけないもの、大切なものとして持ち続けていたいと感じてるんだなというのが伝わってきましたね」。

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役として、作品の中で対峙する中で、変わっていくこと、変わらないものがある。「クローズZERO II」に始まり、「GANTZ」シリーズ、「その夜の侍」、本作と様々な役柄を通じて作品の中で、常に独特の関係性を築き上げてきた。綾野は言う。

「これまでの作品でも互いに向き合ってはいるけど、僕が一方的にやられるか、相手にもされていない関係なんです。今回の『ウシジマくん』は幼なじみでパートナーのような間柄で、向き合うのではなく、孝之が言ったように互いに顔を合わさずに並んでる。『ウシジマくん』を経て、その次の『新宿スワン』でようやく、本当の意味で孝之と向き合えたのかもしれないですね。そうやって対峙すると、引き出されるし、引き出したくなるし、追い詰められるし、追い詰めたくなる。基準があるわけでもなく僕の主観ですが、やっぱり共鳴する人とはするし、響かない人は響かない。そこで響き合えば、確実に芝居は変わってくる。改めて彼を知り、またひとつ山を越えられたのかなと思います」。

最後にひとつ。山田と綾野を含め、邦画界を牽引する現在30歳前後の俳優たちについて。チームを作っているわけでも何かに属しているわけでもないが、最前線で新たなものを貪欲に生み出す世代として、強いエネルギーを放っている。山田はそれを15年以上に及ぶキャリアを通じて一貫して持ち続けてきた強い意志の結果だと語る。

「若い頃からやってきて、いまだに一線で活躍しているヤツらが多い世代だなとは思います。昔から、自分たちで発信して、日本の映画、エンタメを面白くしたい、作品のクオリティも役者の力ももっとアップさせたい、それを世界に出したり、自分たちが世界に出て行きたいという意識は僕だけでなくみんな強く持っていましたね。30歳を超えて、ある程度のポジションやコネクションを確立して、ようやくやりたいことを形に出来るようになってきたのかなと感じています。自分自身、若い時からいろんな役をいろんなジャンルでやってきたのも、そういう思いがあったから。ひとつの決まったイメージで、格好よく見えて、お金がもらえて、モテてというのも悪くないけど、それだけじゃつまらない。恥じることなくもっといろいろやりたいし、そういう姿勢を若い世代にも見せていきたい」。

綾野はイタズラを仕掛けようとする子どものように目を輝かせて言う。「若い子たちがよく『起爆剤になる』って言われたりしますよね。僕らは年を重ねてもいつまでも起爆剤でいたい。常に爆発できる状態であり続けたいんです。思想を持ち続けることが大事だし、口に出したことで実現することもある。いまだからできることを形にしたいし、やりたいと思ったことを『よーい、スタート!』まで何としても絶対につなげる――その意志を持ってやっていきたい」。幾度となく爆発を繰り返しながら、ゴールデンエイジたちは輝きと熱量を増していく。

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