「濱口監督の自主映画」何食わぬ顔(long version) 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0濱口監督の自主映画

2022年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

濱口竜介監督の東大時代の自主映画だ。8ミリフィルムで撮影された作品で、前半は亡き先輩がやり残した映画を完成させるために、残された者たちが喧々諤々やりながら撮影していく話で、後半はその完成された映画、という二部構成になっている。濱口監督自身も出演していて、気取った映画青年役を演じている。彼が旗振り役となって、先輩の残した映画を感性させようぜとなるのだが、微妙に周囲から浮いているのが可笑しい。
濱口監督は、『親密さ』という作品でも、前半は演劇作り、後半はその演劇をそのまま見せるという作品を作っている。最新作の『ドライブ・マイ・カー』でも演劇作りのプロセスを描いているが、作品作りのプロセスとその完成した作品の二重構造に注目する視点は、すでに自主映画時代に発揮されている。
自主映画だから技術も芝居も粗いが、この二重構造が生み出す多層なリアリティと人間の多層なあり方が特別な緊張感を生んでいて、最後まで目が離せなかった。

杉本穂高