劇場公開日 2014年11月29日

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「いいところもある」寄生獣 SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0いいところもある

2014年12月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

原作ファンなので、思ったほど悪くなかった、という後ろ向きの感想になってしまうところがある。

原作を知らなければ、それなりに面白く、考えさせる内容にはなっていると思う。

一番致命的にだめだと思ったのは、ミギーの性格と考え方。彼の人間の価値観に対する冷徹な分析と問いかけがこの作品のキモなのに、作り手がそれを理解していないと感じた。完全にコメディ向けのもので、考え方が浅く、分析にするどさを感じられないし、人間らしすぎる。

CGの演技も不自然なところが多く、アニメ作品と感じさせる。CGは試しながら修正を加えていくしかないから、それなりに予算がなければ直していくのは難しいのだろう。それにしても、使い方が下手だと感じる。アニメ的な演出がそのまま実写に入ってしまっている。

原作のエピソードを省略したり合体させたりして短く短縮する部分でうまくいったところもある。しかし、改変にともなって変えるべきところが変わってない、といった不自然さが目立った。特に母親にまつわる部分に不自然さが多く、主人公の悲しみと慟哭に全く感情移入できなかった。

また、原作では普通の主人公が段階的に戦いに慣れていくところにリアリティと緊迫感があったが、エピソードが少なすぎて、戦いに説得力がなく、予定調和的でしらけてしまう。

こういう、尺が短くなったから悪くなった、ということを言わせないでほしい。

映画のテーマそのものにも不安がある。人間の毒を強調し、田宮良子にもしゃべらせているが、原作では、そのような、人間を毒、パラサイトを中和剤、と考えることもまた人間のエゴであることが重要なメッセージだった。このへんをどう深めるのか、完結編では見どころかもしれない。

映画になって良くなったところもある。
田宮良子の親とのエピソードでは、原作から大幅にセリフをカットして、非常に説得力のある、自然な展開になっている。
実写だと役者の演技や背景などに、漫画よりもはるかに多くの情報を入れられる。その利点をフルに活かした改変だろう。
こういう、映画ならではの質の良い改変を全編に渡ってやってくれたら、ものすごく良作になったんではないかと思う。

SP_Hitoshi