エヴァの告白のレビュー・感想・評価
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悪い男
惚れた女に売春させるキムギドク『悪い男』てのがありましたが、手元に置いておく方法はそれしかなかったかなあと思いました。自分が客として愛人にするほどは余裕がないというからか、まあ単に自分に自信がなかったのかなと思ってしまった。一緒に妹を救い出してからが人生だったかもなのに。
マリオンコーティアールの善人でも悪人でもない顔相はよかった。
一方でホアキンはこの作だとずっとどこかすねてる男の演技で悲哀とか呵責とかよりただ可愛かったかな、という印象でした。
ジェレミーレナーが最後までどこまで信用していいのか読めない、終始怪気がたちこめていてよかった。
神からエヴァへの試練
エヴァへの告白っていうタイトルはちょっとえ?ってなっちゃうので私なら「神」っていうのを入れたい。
結構暗い映画でシリアスな感じ。そこがすごくいいし雰囲気が出ている映画だった。
エヴァは容姿が美しいし、移住してきた外国人ということもあり周りからも気に入られる。とくに男性から。
ブルーノはやはり最初はエヴァの容姿から好きになった。けれど妹のために身を犠牲にしてまで頑張る姿やブルーノを頼りにしたり教会でのことからどんどん内面にも惹かれていったのだと思う。でもやっぱり好きでも利用したり、そんな自分に気づいておきながらやっぱりお金のためにエヴァを利用する。そしてエヴァと一緒にいたいためにウソまでつき彼女を引き止めておく。
エミールもエヴァに惚れたのは容姿、そして雰囲気から。なぜ彼女が身を犠牲にして働いているのかは途中まで知らなかったけれど、何かあるのは分かっていたはず。そしてブルーノの近くにいるということ。ブルーノは危険だと知っているエミール。しかし彼はコネがあるから彼女を救えるのは彼だけ。それは分かっていたと思う。エミールはブルーノのとは対照的にいい人として描かれていたけれど、過去に何かはあったんでしょう。
ブルーノとエミールは従兄弟で昔は仲が良かった。エミールはなんとかしてエヴァを危険なブルーノから遠ざけて自分と一緒にいてほしかった。けれどブルーノはエヴァを愛していた。だから手放したくなかった。だから実の従兄弟であるエミールをとっさにナイフで刺してしまった。エミールは誰も殺す気はなかったのに。
ブルーノとエヴァの恋愛というよりは、エヴァへのブルーノの愛という感じだったと思う。一番最後のシーンがすごく印象的だった。エヴァが妹と船で去り、鏡にうつるブルーノは独りで去っていく。お気に入りです。
エヴァの告白というタイトルだが、告白はどっちのシーンのことだろう。エヴァがおばさんのところで生きることについて語るところだろうけれど、教会で自分の行ってきたことを告白するところとも取れる。
悪いのはエヴァでもブルーノでも神でもない。
1ミリとして動じない女の頑なさ
原題:「THE IMMIGRANT」 (移民)
監督:ジェームス グレイ
ストーリーは
1929年
ヨーロッパから戦火を避けて新天地アメリカに自由と平和を求めてやってきた難民たちを満載した船がニューヨークに向かっている。自由の女神を見つめる、人々の不安げな顔、顔、顔。彼らに戻れる故郷はもうない。船はエリス島の出入国管理局に到着する。
ポーランドから、この移民船に乗ってエバとマグダ姉妹は、遠い親戚を頼ってやってきた。故郷では両親を殺されて、生きていくための糧も失った。しかしエリス島の移民局で妹のマグダは結核を病んでいることを知られて、マグダは隔離され二人は引き離されてしまった。エバは身元引取り人の親戚に拒否されて、強制送還されることになる。病んだ妹一人をアメリカに置いて自分だけがいったん捨ててきた故郷に帰ることはできない。エバは、必死でそこを通りかかったポーランド語の通訳をしていた男に救いを求める。ブルーノと名乗る男は、いったんエバの求めを無視するが、懇願を繰り返すエバを不憫に思って、賄賂を係官に渡してエバを引き取る。
エバは、ブルーノに言われるまま、マンハッタンのアパートに落ち着く。移民局では一見紳士に見えたブルーノは、移民としてやってきた女たちを集めてキャバレーのダンサーとして働かせ、一方では売春させているような男だった。アパートの女たちは、恩人ブルーノのことが大好きだ。エバにもやさしく、気の良い娼婦たちだった。
ブルーノは、おとなしく付いてきたエバを、当然のように自分の女にしようとする。しかしエバは、恋愛の経験もない生娘だった。ブルーノはエバの拒否にあって、怒りまくった末、上客に売り飛ばす。エバは、妹を救い出してアメリカで暮らしていくために、仕方なく運命に身を任せる。しかし、ブルーノの怒りに触れて心底怯えて客を取らされたエバは、すきを見て娼婦館から逃げ出して、遠い親戚の家を探し出して保護を求める。何十年かぶりで再会した叔父と叔母は、ぎこちない笑顔でエバを迎い入れるが、翌日、エバを警察に引き渡し移民局に送る。叔父たちはエバが娼婦に身を落としたことを知って、不法入国者として通報したのだった。エバは強制送還されることになった。
そんなエバに、ブルーノが再び会いにやってくる。エバは、妹を取り戻すためにどうしてもアメリカに残らなければならない。ブルーノにいわれるままエバは娼婦館に戻った。ブルーノは、強い意志をもったエバに、次第に惹かれていく。もう他の女など、目に入らない。
一方エバは、キャバレーのマジックショーを演じているブルーノの従兄のオーランドという男と出会う。オーランドは一目で出会ったばかりのエバを愛してしまう。しかし密かにエバに会いに来たところをブルーノにみつかって殺されそうになる。ブルーノとオーランドの争いは警察沙汰となり、ブルーノは警察に拘禁され、オーランドは、別の土地に向かって巡業に出ることになった。遠く旅立つオーランドに、エバは自分の夢を語る。妹を引き取って、カルフォルニアのような温かい土地で二人で暮らしたい、それがエバの望みだった。オーランドは旅立ち、ブルーノは警察から釈放される。
しかしエバをあきらめられなかったオーランドは帰ってくる。ついに諍いの末、ブルーノはオーランドを殺してしまう。エバは教会で懺悔する。生きていくために、愛してもいない男に言われるまま身を落としてきた。そんな罪を犯してきた自分は神に許しをもらえるのだろうか。真剣に祈るエバの姿を見て,ブルーノは、エバを自由にしてやろうと心に決める。監視に賄賂を使って、隔離されている妹を引き取り、エバと妹にカルフォルニア行きの切符を渡してやる。エバは妹と再会して振り返りもせずにブルーノのもとを去っていく。エバを強制送還から救い出し、無一文だったエバに住居を与え、食べさせて世話を焼き、心から愛してきた。エバを横取りしようとする男を嫉妬から殺しまでした。エバを本当に愛してきた。しかし、エバは去り,ブルーノには何も残っていない。というお話。
マリオン コテイアールの頑なな信仰心と、超然とした美しさ。一方ホアキン フェニックスの酒と金とアルコールにどっぷりつかったダーテイーな姿が際立っている。二人とも、とても良い役者だ。どちらにも共鳴、共感できる。とても悲しい映画だ。
エバは娼婦になっても1ミリとして動じない。少しも譲らない。そんな自分を通していて、無垢な処女の強さと純粋さを維持している。それに比べるとブルーノはずっと人間的だ。移民で来て、生活に困った女たちや、不法移民を救い出して、娼婦にして小金をため、女たちといつも飲んで騒いで愉快に暮らすことが大好きな男だ。それが、とんでもなく美しい女に惚れてしまって自分の人生が狂ってしまう。ついに殺人まで犯して逃亡犯になったうえ、女をあきらめなければならなくなって、無一文となる。背を向けて、振り返らずに去っていく女に「自分はこの女の一体何だったのか」と、泣きじゃくる男を見ていて、ついほろっとなる。人は妥協して生きていくものなのに、一歩も譲らない女のために自分の人生を捨ててしまった男の悲しさ。譲らない女と、それの翻弄された男。何としても妹を自分が守って生きていきたいという強い願望と処女性。男からみたら、こんなジコチュー女のために自分の一生を棒にふることになって、こんなはずじゃなかった、というのが実感だろうか。マリオン コテイアールの美しさよりも、ホアキン フェニックスの落ちぶれ方に、すっかり魅せられた。
心に重くのしかかる作品
ポーランド・カトヴィツェを離れてすし詰め状態の船で新天地アメリカへ向かう姉妹。
しかし妹は結核にかかり入国できずにエリス島に隔離されてしまいます。
彼女の薬代を稼ぎ、自身もアメリカで生きて行くために
バーレスクの娼婦ダンサーに身を落とす姉・エヴァ。
彼女の過酷な運命と、彼女を取り巻く2人の男たちの愛憎を描き、
移民の暗部に迫るヒューマンドラマで、
昨年、カンヌ映画祭コンペティション部門にも選出されました。
舞台は古き良きアメリカ…なのだけど
この映画はどこかフランス映画みたいに抒情的な雰囲気。
終始天気が曇っててモノクロ映画みたいなけだるさを醸しています。
重く、退廃した悲壮な感じの美人姉を演じるのはマリオン・コティヤール
彼女は『エディット・ピアフ 愛の賛歌』で有名になった女優さんですね。
その脇を、二人の男
『ザ・マスター』のホアキン・フェニックスと『ハート・ロッカー』のジェレミー・レナーが
がっちり固めています。
尚、彼女に焦がれる男性の一人・オーランド(ジェレミー・レナー)は
マジシャンという設定ですが、
このマジシャンという設定がのちのちの伏線に
絡……ん…でくると思ったら…大間違い!( ´艸`)
見事な肩透かしを…苦笑
まぁ、人生はマジックみたいにうまく行かないのね…と思えば
多少途中のショー内容は絡んでいるのかな?
話は最後まで重く重くのしかかり、
ハリウッド映画みたいな単純な胸すくストーリーが好きな人にとっては
結構陰気くさく、モヤモヤが残る作品かも。
心のひだまでを立体的に描いた美しさ・重厚さを楽しむ映画であって
ストレス発散にはなりませぬー。
もちろん、心にはズシン…と文鎮を乗せたみたいに重くのしかかる作品ではあります。
娼婦に身を落とす主人公ではありますが
「生きようと、もがくのも罪か?」
「女をゴミ扱いする男にへつらわない」と言う言葉は胸を打ちますね。
最後テロップが全て流れ終えた後に出て来るメッセージ
KEEP YOUR HEAD (うろたえるな)
というフレーズは、
私は彼女の教会での告解を聞いてしまった
ブルーノ(ホアキン・フェニックス)の彼女へ捧げる言葉にも思えます。
…と思ったらこの「キープユアヘッド」、どうやら製作会社の様ですね。いやん、絡めて考えちゃったわ。。。
それにしてもホアキン…良かった。
終盤エヴァにかける言葉は、よくよく物語のはじまりの流れを考え直すにつれ
ホアキンがエヴァの未来を想うがゆえにかける
人生を賭しての「嘘」である様にも思いました。
さてさて。
余談ですが「カトヴィツェ」は前少しだけ旅したことがあります。
ここで降りて、クラクフへ向かうローカル線に乗り換え、
その途中にあるのが、かの有名なアウシュビッツ(オシフェンチム)。
そのクラクフへ向かう列車のコンパートメントでアメリカ人に出逢ったのですが、私がアウシュビッツに行くと言うと
「おー!なんで君はそんな陰気くさい所に行きたがるんだ!」と
信じられないような顔をされたのを今でも覚えています。
姉妹が恋焦がれてやまないアメリカという「夢の国」、
当時のアメリカ青年のことを「カトヴィツェ」で少し思い出してしまいました。
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