「ハイヒールは淑女の嗜み👠 これがエメリッヒ版『GODZILLA2』ちゃんですか?」ジュラシック・ワールド たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ハイヒールは淑女の嗜み👠 これがエメリッヒ版『GODZILLA2』ちゃんですか?
遺伝子操作により蘇った恐竜たちが引き起こす大騒動を描くSFパニックアクション『ジュラシック・パーク』シリーズの第4作にして、テーマパーク「ジュラシック・ワールド」の開園に端を発する更なる惨劇を描いた『ジュラシック・ワールド』シリーズの第1作。
舞台は『1』から約20年後のイスラ・ヌブラル島。放棄されていた「ジュラシック・パーク」は、新たな経営者の下で「ジュラシック・ワールド」として蘇り、大人気テーマパークとなっていた。そんなある日、遺伝子操作により作り上げられたとある恐竜が、島内を恐怖に陥れる…。
○キャスト
主人公であるラプトルの調教師、オーウェン・グレイディを演じるのは『her/世界でひとつの彼女』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のクリス・プラット。
「ワールド」の重役であるキャリア・ウーマン、クレア・ディアリングを演じるのは『スパイダーマン3』『エクリプス トワイライト・サーガ』のブライス・ダラス・ハワード。
「ワールド」に招待されたクレアの甥、ザック・ミッチェルを演じるのは『キングス・オブ・サマー』のニック・ロビンソン。
オーウェンの同僚、バリー・センベールを演じるのは『最強のふたり』『X-MEN:フューチャー&パスト』のオマール・シー。
製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ。
テーマ曲はジョン・ウィリアムズ。
『Ⅲ』(2001)以来、約14年ぶりの新作ということで大きな盛り上がりを見せた本作。自分は特別『ジュラシック・パーク』に思い入れはないのだが、話題作という事で鑑賞してみた。
率直な感想としては、「面白い。面白いけどさぁ…。なんか求めていた物と違う……」といったところか。
序盤〜中盤にかけては物語の進行が遅く、また恐竜もほとんど登場しない為「これはハズレかも…😅」と思わされたが、中盤を過ぎたあたりから物語が加速度的に盛り上がる!特にCEOのオッさんが爆死してから、満員の来場者の中に翼竜が突っ込んでくるまでの一連の虐殺ファイトは、シリーズ史上最高の盛り上がりポイントだったかも!
過去3作は、恐竜による攻撃をホラー映画さながらに描写していた。ラプトルやプテラノドン、スピノサウルス、Tレックスはまさに恐怖を具現化したかのような存在で、どの襲撃場面も観客を怖がらせることを第一に考えて描写されていたように思う。
反面、今回の恐竜たちの攻撃は、もう完全にギャグ!CEOのオッさんのヘリコプターがプテラノドンに襲われるシーンは爆笑もんだし、クレアの秘書のお姉さんが襲われる場面なんてほとんど漫☆画太郎😂子供から目を離す保護者は、極刑に処す!
『パーク』の重厚さを期待すると肩透かしを喰らうが、ディザスター不条理コメディとしてはなかなかよく出来ています。
恐竜による虐殺、というのはおんなじはずなのに、人死にシーンが旧シリーズと新シリーズで、こんなにも温度感が違うのは何故か?これは90年代と10年代とでは、映画界のトレンドが違ったという事なのだろう。世紀末の影響もありシリアスでダークなものが流行った90年代と、スーパーヒーロージャンルの興隆により明るく派手なものが求められた10年代。このトレンドの違いを敏感に読み取ったからこそ、それぞれが時代を代表する様な作風になったのだ。…まぁ単純に監督の作家性の違いに起因しているのかも知れないけどね。
興味深かったのは、CG技術の発展が映画に何をもたらしたのか、本作がそれをメタ的に描いているように見えた事。
CG技術が珍しかった90年代と、CGが当たり前になってしまった10年代。『ジュラシック・パーク』(1993)はCGによる映画制作の草分け的存在であり、だからこそ観客は映画に登場する恐竜の実在感に息を呑んだ訳だが、それから20数年、今やCGで作られたリアルな恐竜がスクリーンに登場したところで、観客は驚かない。正に作中のセリフの通り、「20年前 人々を驚かせた恐竜もー 今の子供たちには 動物園の象も同じ」な訳だ。
さて、「ワールド」の目玉として、更なるスリルと恐怖を観客に与える為作り上げられたのがインドミナス・レックスである。種々の恐竜のDNAを混ぜ合わせる事で生み出されたこの派手で過剰な恐竜は、あたかもドーパミン中毒な観客を喜ばせる為に派手さを増した現代のCG映像のメタファーの様。リアルさよりも怪物的な強さと見た目が重視されたこの恐竜が大暴れするというのは、製作陣による自虐的な娯楽映画批評なのだというのは牽強付会に過ぎるのだろうか。
本作の目玉恐竜であるこのインドミナス・レックス、メタ的な意味では面白いが、物語的にはどうにも受け入れ難い…。だってこれ、恐竜じゃないじゃん!モンスターじゃん!怪獣じゃん!
この悪いイグアナみたいな見た目、どこかで…。1998年…。ローランド・エメリッヒ…。『GODZILLA』………。うっ…、頭が…。
恐竜映画だと思って観てみたら怪獣映画だった。いやそりゃ怪獣映画は好きだけど、なんか求めていたものとは違うんだよなぁ。リアルに存在したかも知れないからこそ恐竜にはロマンがあるのです。そう、このシリーズに求めていたのはロマン。特撮的ファンタジーでは無いのです。
好感を持てたのは、登場人物を一新するという歯切れの良さ。迷子を救い出そうと奔走する男女、という構図は『1』を髣髴とさせるが、キャラクター設定が『1』とは全く異なっている為、新鮮に楽しむことが出来た。
特に好きなキャラクターは、主人公オーウェン!…ではなくてキャリア・ウーマンのクレア!!
初めは、いけすかない女だなこいつぅ…と苦々しく思っていたんだけど、物語が進むにつれてどんどん彼女に対する印象が変わっていった。最終的にはその魅力にメロメロ💕まさか、これは恋っ!?
絶対にハイヒールを脱がないという強い意志、そしてハイヒールを脱がずに全力疾走をするために磨き上げた、豪快すぎるランニング・フォームこそが彼女を唯一無二のヒロインに押し上げているといえよう。やはりアクション映画のヒロインはワイルドならワイルドなほど良いっ!!
クライマックスのインドミナスvsレックス&ラプトル連合軍の戦いは、一体何を見させられているんだ…?と呆れてしまったが、なんだかんだで結構感動。ブルーの女傑っぷりに天晴れ💮
大傑作という訳では無いが、娯楽性は高いし、殺戮シーンも笑えたし、シリーズの仕切り直しには良かったと思う。ただ、『パーク』のガチファンはこれをどう評するんだろう?キメラ恐竜はNGという人も多いと思うんだけど…。
> > シリアスな90年代と、お気楽な物が求められていた10年代
なるほど、ですね。
このシリーズ、いつも楽しめるんですが、意外と記憶には残らないんですよね。(だから、何度観ても楽しめるんですが…)

