「遺伝子は商売道具ではない!」ジュラシック・ワールド movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
遺伝子は商売道具ではない!
頓挫になったジュラシックパークが、ハモンドからマスラニに引き継がれ、いよいよ開園している。舞台はシリーズ1と同じイスラ・ヌブラル島。シリーズ2,3の、ジュラシックパークで展示する恐竜を育成するために使っていたサイトBは今回は出てこない。
懲りずに造られた恐竜テーマパークを舞台に、より歯が多く、より恐い物をと様々な生物のDNAが掛け合わせられた試験管ベイビーの恐竜達が暴れ回る。女性が仕事で活躍するためにどんどん強くなってしまうご時世を反映したかのような、強情ともとれるほどの少々利己的キャリアウーマンクレアが、恐竜と対等に対話を試みどんなピンチでも仲間を守るオーウェンと共に、目の前の人を大切にする謙虚な気持ちと、物見台からではなく現場で使える強さを取り戻していく。スリルと迫力と海猿のように立ち向かうオーウェン達。展開も軽快で引き込まれる!実際のテーマパークオーナーはインド系マスラニに代わり、DNA操作でゲテモノ凶悪恐竜を作り出し手に負えなくなるとあっさり逃げる中国人、大活躍しているようで現場で踊らされている白人、と世界の縮図のよう。作中でもあるように、遺伝子操作で例え作り出したとしても、感情もあれば食欲も性欲もあり、繁殖もする。管理下に置いているようで実は遺伝子「操作」なんていかにおこがましいか、予想外の事態に瀕して、遺伝子操作された恐竜に逆に命を弄ばれる登場人物達を通して学べと言われているよう。
それこそ、ジュラシックパーク創設時の狙い、「人間がいかにちっぽけか思い知る」を体感できてはいるのだが。毎回犠牲者多数でそれを言っても。。
今回メインに出てくるインドミナスは、ティラノサウルスに、擬態できるコウイカや、熱感知できるアマガエル、極めつけはラプトルの遺伝子が組み込まれている。
試験管内で産まれ、クレーンで与えられる肉しか知らず、母性も社会性も知らないインドミナスが脱走した時、予想以上の知能で弄ぶように他の恐竜や人間を殺戮しながら、弱肉強食のどの位置に自分がいるのか探り出す。
たまたまその日に居合わせてしまった、クレアの姉の子供の兄弟2人は、親の離婚に不安を抱えながらも、兄弟で助け合ってパークから生き延びようとするうち、強い絆を再確認する。弟が、インドミナスの歯を見て、足りないよ、もっと強いのがいる!と気づいた事で、ティラノサウルスの存在を思い出し、身の危険を顧みずにティラノサウルスを放して、最後にインドミナスとティラノサウルスを決闘させたクレア。そのティラノサウルスはおそらく1で出てきたもの。クレア自身も、最恐と作り上げられたインドミナスよりも、最強としてティラノサウルスを認識しているのが、シリーズ全作通して掲げている過去への敬意のようで興味深い。そのティラノサウルスも、数十年前に人間が化石のDNAの欠損部分に両生類のカエルを入れたもので、自然ではないのだが、試験管内でこねくり回されたインドミナスよりは自然に近い。
途中、オーウェンが手懐けたラプトル5頭がインドミナス終息に兵器として駆り出されるが、インドミナスに流れたラプトルの遺伝子により、オーウェンの5頭がインドミナス側について人間を襲い出したりと、力関係の変化が面白い。ラプトルはブルー1匹以外は、巨体インドミナスにやられてしまったが、ティラノサウルスとブルーが結託してインドミナスに挑むクライマックス。
そして。あれだけ最強恐竜と恐れていたインドミナスを漁夫の利的に水中から現れパクリと食べて最後まで生き残る歯が88本もあるモササウルスを、水族館のイルカショーのように間近で見世物にして楽しんでいたなんて。
人間の浅はかさを思い知る。
一貫してサブキャラとして登場するプテラノドンも、今作でもパークの展示物として存在するが、翼竜館が壊れていっせいに飛び出し羽ばたきながらパークの観客達を弄ぶシーンは恐怖そのもの。自然にいる姿こそが1番美しいと実感する。共存も管理も無理。
最後までパークの司令室に残ったメガネ男性ローリー。一見さえないけど恐竜への敬意があり、勇敢だった。過去の頓挫ジュラシックパークグッズをオークションで落として着ていただけあり、このシリーズの意味をよく理解しているキャラクターとして存在していた気がする。
すっかり様変わりし更にハイテク化されてオープンしているパーク。1で巨大標本があったところには3Dテレグラム、いまだ存在するゲノム操作説明のATCGを説明するイモムシみたいなキャラ、1で観客がコースに出る時乗っていたジープはガラス球体に変わったが、兄弟が逃げ込んだ小屋でジープは乗り捨ててあり復活を遂げるし、1で創設者ハモンドの孫の少年が使っていたヘルメット式電子双眼鏡を兄弟が見つけるシーンも。今作はグラント博士もエリーもマルコム博士も出てこないが、過去作オマージュが満載で存分に楽しめる。