「設定がもったいない。」ジュラシック・ワールド ドラゴンミズホさんの映画レビュー(感想・評価)
設定がもったいない。
実際にパークが開園しちゃったっていうアイデアはイイね!海中恐竜や子供恐竜との触れ合いコーナーなんかイマジネーション豊かで楽しい…だけにシチュエーションを生かしていない展開が物足りない。
●どうせパニック映画にするんなら徹底的にやってほしい。あまり陰惨な映画に出来ないのはわかるが、翼竜に襲われるだけなんてパニック度が低いでしょ。他にも凶暴な恐竜をわんさか出して人間が逃げ惑う方が面白い。その上で悲惨な映画に見せないようにするのが演出だと思う。
そもそも逃げ惑うのが兄弟二人だけなら、開園されたという設定の意味がない。「ポセイドンアドベンチャー」みたいに老夫婦が出たり、あるいはボーイスカウトみたいな子供の団体が出ても良かった。その中に不良少年などトラブルメーカーのキャラがいたらもっと話は広がる。避難が遅れてある施設に取り残される子供たち。そして親たちがもめるとかね。
●そもそも兄弟の親が離婚寸前で、しばらく合っていない叔母さんに預けるっていう設定は何の意味があるんだ?ひねくったわりにリアリティがなくてわかりにくい。普通に副社長の息子とかの方が分りやすくない?それだったら映画の最後に家族の絆を取り戻すことがすっきり頭に入るけど。そもそもこの叔母さんの葛藤って何だったの?仕事のやりすぎ?自然への無知?そもそもこの叔母さんのせいで人が死んでるし、メデタシメデタシじゃないよな?
●結局、この映画がピンとこないのは視点があやふやだからだ。誰目線の物語かさっぱりわからない。暴れる恐竜を並べただけの映画だな。たぶん観客は恐竜の迫力にそこそこ映画を見れるんだけど、見終わったとたん、主役誰だっけ?みたいな…。感情移入するポイントが見えないんだな。兄弟の話?監視員のニーちゃんの話?家族の絆?恋人がよりを戻す?つまり何の話なの?
●たぶんこの監督は人間感情の流れをキチンと考えてないな。命からがら逃げたあとは安心して抱きついてキスだろ…みたいに感情を記号でしかとらえていない。だから見てて違和感満載だった。兄弟が崖から飛び降りてホッとして笑い合う…も何か無理くりだよな。食われそうになって命からがらなのに、飛べて良かったアハハ…っておかしくないか?はじめて逆上がり出来ましたじゃないっつーの。
●小悪党のデブのオッチャン、そんな悪いことしてないよな(笑)。
ていうかニイちゃん、銃を持ってるんだからラプトルから食われそうになるの助けてやれよ。
思えば1作目は恐竜愛に満ちた映画だった。どうやったらリアルな恐竜が作れるか製作者が楽しんでいるのが伝わってきたな。生き物としての生態を研究して、この恐竜はここではチラっとしか見せないけど、ここでバーンって見せよう!とかいろいろ工夫して。
技術は進歩したけど、ただのモンスター映画になっちゃったな…。
何かいろいろ盛り過ぎて、基本的な映画のテーマを忘れた映画の典型に思える。
最後に
●あの新種の恐竜、いらんやろ…。