劇場公開日 2017年2月11日

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「1968年後のヨーロッパ」家族の肖像(1974) talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.51968年後のヨーロッパ

2020年10月24日
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鑑賞方法:VOD

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興奮

知的

ビスコンティ!長尺、そして勉強モードに自分がなってしまいそうで離れていましたが、こんなに面白い映画とは!

一人、静寂の中、幸福で平和で美しい家族の肖像画に囲まれていた教授の前に、突如として何の文脈もなく現れた「家族」。めんどくさい、煩わしい、うるさい、どっかに消えて欲しい存在。よりによって68年以前と以後がごちゃ混ぜで、煩わしさと騒々しさと迷惑の塊の「家族」。それとの遭遇で、俄然、教授は心の中に何かが蘇り、馬鹿馬鹿しいと思い呆れながら芝居じみたことをしながら、この、めんどくさくて訳の分からない「家族」を結果的に、もしかしたら、生きる力を得て好奇心が芽生えて、無意識の内に喜びと共に受け入れる。それから教授は、自分の母を、妻を思い出すようになる。

68年、コンラッドの世代と教授の世代は激しく対立していたはずだ。でもコンラッドを一番理解し愛したのは教授で、教授の職業の転換の意味と孤独を一番理解したのはコンラッドだと思う。

教授の重厚な書斎であり客間、壁を埋め尽くす肖像画と書籍、家具、しずしずと運ばれる銀食器。台所ではワインはコップで、ディナーではトスカーナのワインを美しいグラスで。ベッドリネンは白。複数の使用人を使ってあんな風に暮らせる場面を作り出せるのはビスコンティならではと、一人、心の中で盛り上がり感動しました。

英語だけだったのが残念で、イタリア語メインで、たまにドイツ語が混じったら良かったのにと、思った。

そして、役者の素晴らしさ!まず、シルバーノ・マンガーノに痺れました。彼女がバート・ランカスターに猫のように引っかきまくって言い立てる場面は美しく最高だった。役者は台詞!!と外見!!

そしてHelmut、こんにちは、お久しぶりです。美しい。あなたが最後に言った言葉は、最近見た映画、Martin Edenを思い出させてくれました。

talisman
とみいじょんさんのコメント
2025年3月24日

お返事をありがとうございます。

私も新作はあまり追わなくなりました。

解説付きの上映会などに足を運ぶほか、隙間時間にDVDで見ることが多いせいか、旧作を見ることが多くなりました。
 新作を見るよりがぜん面白い!勿論、おもしろくないのは淘汰されて、残ったものが旧作なので、当然と言えば当然なのですが。
 毎回新しい発見続きです。そんな旧作の中でも、やはりこれは大画面で、音響の良い場所で観たいというものもありです。

映画製作も試行錯誤でしょうが、鑑賞する側も、より味わいを深めるために、試行錯誤ですかね(笑)。

とみいじょん
とみいじょんさんのコメント
2025年3月23日

お返事ありがとうございます。

この映画が繰り返し見たくなる映画。同感です。

物語が物語、映像が映像なので、画質の良い映画館で、気合を入れてみた方が良いのでしょうが、
DVDで、その耽美な映像をぼーっと見てしまう時もあります。
疲れた時に、ぬぼーっと、一つの時代が終わる世界観に浸って、ランカスター氏演じる公爵に、恐れ多くもなり切った気分で、自己憐憫に浸ってしまう時も(笑)。

ご自身の鑑賞の仕方が見つかるといいですね。

とみいじょん
とみいじょんさんのコメント
2025年3月23日

お返事をありがとうござました。

「スルメ映画」お気に召して嬉しいです。

『山猫』は重いというか、時代絵巻なので、それを冗長ととるか、庶民には垣間見られない世界を丁寧に描いてくれたとみるかによっても感想が分かれると思います。コメディっぽいところもありますが、笑えるかは人に寄るかと思います。
 また、君主制から、よく言えば民主制・経済主導社会への切り替わりを描いた映画でもあります。佳き君主に守られて、一定の福利厚生がはかられていた社会から、己の力頼みの経済主導社会への移行。
 イタリア史に疎くても、私はその意匠と主人公の演技に魅かれましたが、よりしっかりと理解するためには簡単にでもさらっておくと良いのかもしれません。そういう意味では”重い”映画です。

ぜひ、ご覧になって、レビューを楽しみにしています。

とみいじょん
とみいじょんさんのコメント
2025年3月21日

コメントをありがとうございました。

含蓄の深い映画ですね。鑑賞者の年齢によっても、感じることが違うのでは?と思います。
前知識ゼロで鑑賞されたのに、この映画の魅力に気が付かれるとは!

同じイタリア語を話しているはずなのに「言葉が違う」と教授がコミュニケーションをあきらめたのにも関わらず、コンラッドとの出会いをきっかけに、「家族」として、「言葉が違う」彼ら(夫人とその娘・婚約者)を受け入れることにした教授。それでもの結末。

「言葉が違う」と教授が嘆くところが『山猫』とシンクロしてしまいました。と同時に、同じ日本人でも「言葉が違う」とコミュニケーションをあきらめてしまう人々も思い出して…。
 それと同時に、貴族として育ちながら、左翼に傾倒し、かつ性癖から周りと相いれなかった監督の想いも反映しているのかしらと。

観れば見るほど、噛めば噛むほどのスルメのような映画ですね。

とみいじょん
きりんさんのコメント
2020年10月24日

イタリア語とドイツ語混交のビスコンティと言えば
「ボッカチオ70」。
オススメです。

きりん
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