「1968年後のヨーロッパ」家族の肖像(1974) talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
1968年後のヨーロッパ
ビスコンティ!長尺、そして勉強モードに自分がなってしまいそうで離れていましたが、こんなに面白い映画とは!
一人、静寂の中、幸福で平和で美しい家族の肖像画に囲まれていた教授の前に、突如として何の文脈もなく現れた「家族」。めんどくさい、煩わしい、うるさい、どっかに消えて欲しい存在。よりによって68年以前と以後がごちゃ混ぜで、煩わしさと騒々しさと迷惑の塊の「家族」。それとの遭遇で、俄然、教授は心の中に何かが蘇り、馬鹿馬鹿しいと思い呆れながら芝居じみたことをしながら、この、めんどくさくて訳の分からない「家族」を結果的に、もしかしたら、生きる力を得て好奇心が芽生えて、無意識の内に喜びと共に受け入れる。それから教授は、自分の母を、妻を思い出すようになる。
68年、コンラッドの世代と教授の世代は激しく対立していたはずだ。でもコンラッドを一番理解し愛したのは教授で、教授の職業の転換の意味と孤独を一番理解したのはコンラッドだと思う。
教授の重厚な書斎であり客間、壁を埋め尽くす肖像画と書籍、家具、しずしずと運ばれる銀食器。台所ではワインはコップで、ディナーではトスカーナのワインを美しいグラスで。ベッドリネンは白。複数の使用人を使ってあんな風に暮らせる場面を作り出せるのはビスコンティならではと、一人、心の中で盛り上がり感動しました。
英語だけだったのが残念で、イタリア語メインで、たまにドイツ語が混じったら良かったのにと、思った。
そして、役者の素晴らしさ!まず、シルバーノ・マンガーノに痺れました。彼女がバート・ランカスターに猫のように引っかきまくって言い立てる場面は美しく最高だった。役者は台詞!!と外見!!
そしてHelmut、こんにちは、お久しぶりです。美しい。あなたが最後に言った言葉は、最近見た映画、Martin Edenを思い出させてくれました。