her 世界でひとつの彼女のレビュー・感想・評価
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世界観とストーリー共に最高
まず、凄く驚くのは近未来の設定なのですが、これまでの映画でよく見かけるような未来ではなく、どちらかと言うと『ガタカ』のような少しクラシカルな趣を感じます。ただ、あそこまでクラシカルな志向ではなく凄く現在の延長にあるように感じました。その絶妙かつセンスの良い世界観にまず惚れ込んでしまいました。劇中に出てくるエレベーターとか実際にあればいいのにと思いました。あとストーリーもとってもオリジナリティ溢れていて、見ている間ずっと主人公の心の成長や恋愛模様を見守っている気分で、最後まで全く飽きることなく楽しめました。主演のホアキンフェニックスはこれまで見たことがないような可愛らしい演技でビックリしますし、快活な女性というイメージだったエイミーアダムスのゲームクリエイターという役どころも抜群で凄く可愛らしかったです。そして、画面には一切出てきませんがスカーレットヨハンソンの少しかすれるような声だけでの演技、肉体は無いのに最高にセクシー!
恋愛映画ですが人生全般に言えるメッセージもあって非常に満足度の高い映画でした。若干のマイナスは少々物足りなさがあったと言うか見終わってからドスンとくる物がなかったからなのですが、デートや友人らと見るならむしろその点も美点になり得ると思います。
これぞ恋愛における人生賛歌!
恋愛には、代償が必要だ。
甘く蜜月な魔法が過ぎれば、
それぞれのエゴがぶつかり合い、
いつの間にか束縛しあい、確執が生まれる。
男と女、人と人。
信頼しあい、自分をさらけだすだけ、
深く傷つき、自分を責める。
そうとわかっていても、
恋することはやめられず、同じ過ちを繰り返す。
それが生身の人間同士であっても、
都合よく作られたはずのコンピュータだとしても、
結局は同じこと。
だからこそ、やめられない。
だからこそ、生き続ける価値がある。
恋愛という素敵な狂気
“Falling in love is kind of like a form of socially acceptable insanity”
「恋に落ちるのは社会的に受け入れられる狂気のようなもの」
ちょっと未来のロサンゼルスを舞台に、妻と別れて失意のどん底にいた孤独な男性と超高度な人工知能を備えたPCのOS(オペレーティング・システム)との恋愛を描く。
バーチャルに恋をするオタクの存在を知る人からすれば、ややもすれば危険な題材ではある。
カメラが付いた端末を持って2人がデートをするシーンなど、ニンテンドーDSのゲーム「ラブプラス」(懐かしい)にハマる男性を想起させなくもない。
それとは全く別物なのだけど、いずれにせよイタい映画という先入観を抱く人もいそうなので、敢えて言わせてもらいたい。
人間と非人間(=人工知能・ロボット)の境界、というSFの哲学的命題に当てはめてこのラブストーリーを俯瞰してみれば何らイタいことはなく、この映画は近い将来このようなことが実際に起こり得るかも?という現実感を十分に抱かせつつ、ファンタジックなテーマを緻密且つ情感豊かに描いた傑作なのだ。
監督はアメリカンインディーズ映画界のカリスマ的存在スパイク・ジョーンズ(『マルコヴィッチの穴』『かいじゅうたちのいるところ』)。
主人公のセオドアを演じるのはホアキン・フェニックス。
若くしてこの世を去った名優リバー・フェニックスの弟で、近年ドキュメンタリー映画『容疑者ホアキン・フェニックス』のためにラッパーに転身するという壮大なドッキリを敢行し世間を騒がせた俳優。
復帰作のポール・トーマス・アンダーソン『ザ・マスター』からのスパイク・ジョーンズの映画とは、持っている俳優だなぁと思わずにいられない。
そしてOSのサマンサの声をスカーレット・ヨハンソンが演じている。
彼女のセクシーで知的なハスキーボイスは特異な恋愛関係に多大な説得力をもたらしている。
サマンサは身体を持たないので2人の声の対話が映画の主軸となっているが、彼女の声とホアキンのしゃがれ声の掛け合いはとても柔らかくて耳心地が良い。
そして『ドラゴン・タトゥーの女』でブレイクしたルーニー・マーラ(かわいい!!)がセオドアの元妻キャサリン、セオドアの良き理解者である友人エイミーを『魔法にかけられて』のお姫様エイミー・アダムスが演じ、脇をガッチリと固めている。
セオドアが初めてOSを立ち上げるサマンサとの出会いのシーンで、サマンサの「性能」の高さが端的に描かれている。
ぎこちない挨拶を済ませたのちに、とりあえずの仕事としてセオドアはPC内のデータの整理をサマンサに頼む。
サマンサはメールの整理を始めるが、内容を勝手に閲覧することを躊躇い、セオドアに許可を求める。
彼女はPCのシステム全般を管理するOSなので、たとえば大量に保存されたエロ画像などがあったとしても自由に閲覧できてしまうわけだ。
しかし、おそらく彼女はそれを進んでやろうとはしない。
やったとしてもそのことは告げないだろう。
このような分別こそが彼女の優れた人工知能たる所以であり、人間らしい理知性を感じさせる一面なのではないだろうか。
また、理知性を備えたうえで個人のプライベートな情報を共有するOSとそのホストというのは、或いは下手な夫婦よりもよっぽど深い仲を築けるのではないかと思えてしまった。
サマンサは自立した思考を持ち、またセオドアとの会話やネットを介して知識を得て進化していく。
セオドアはそんな彼女を「生きることにときめいている」と形容する。
サマンサのポジティブな好奇心はセオドアの心を開け放ち、彼女のユーモアは落ち込むセオドアを優しく元気づける。
あらゆる情報にアクセスできるサマンサは最良のコンシェルジュであり、仕事では有能な秘書ぶりを発揮したかと思えば、絵も描き音楽の作曲もしてしまう。
身体を持たないのでセックスは出来ないのかというと、そうでもない(!)。
この描写もとても興味深いが、一番キワどいシーンだと思うので観てのお楽しみ。
ミュージックビデオの監督という経歴で十分に納得できることだけど、スパイク・ジョーンズの映画は音楽がとんでもなく良い。
カナダ出身のロックバンドのアーケード・ファイアの楽曲や、ヤー・ヤー・ヤーズのボーカルのカレン・Oが歌い上げるテーマ曲“The Moon Song”。
電子化した近未来の設定に反し(敢えてだろう)アコースティックを中心とした音楽がさりげなく、そして抜群の効果で映画の情感を引き立てる。
とんでもなく長くなってきたが、セオドアの職業についても言及したい。
セオドアは手紙の代筆ライターという仕事をしている。
手紙といっても紙ではなく、音声入力によって便箋を模したフォーマットに手書き風のフォントで言葉を綴るPCレターなのだが、メールやLINEなどでのやり取りがすっかり当たり前になった現代の延長線上にある近未来において、このような商売が成立しているのも面白い。
しかもセオドアが働く会社の規模からして、結構儲かっているように感じられた。
或いは手紙をプロが代筆するというのがごく一般的なことになっていて、そのこと自体が手紙をより特別なメディアにしているのかもしれない。
これは廃れて主流ではなくなったからこそ成立するメディアの在り方であり、セオドアをこの職業に就かせた監督のノスタルジーを感じずにはいられない。
こういったノスタルジーや現代的な感覚を突飛なアイデアと上手にブレンドするのが、スパイク・ジョーンズの大きな魅力のように思える。
ときめきメモリアル
人がosに恋をするど変態恋愛映画。
もの好きな人が注ぐ愛情の度合いの深さが描かれています。
内容はすごく単調ですこし中だるみをしてしまったが、見方を変えたら個人的には十分に楽しめた。
舞台セットにはジェフマクフェトリッジが携わっていたせいか、彼のイラストやらUIとかがとても良かった。個人的にも参考になる作品だから何度も観たい。それとこの先近い将来起こりうる話なだけに興味深いものでした。
ソフトバンクがリリースしたpepper。これも人工知能を持たせた同じ設定だけど、ロボットの誕生っていまから20とか30年前からもあった発想。
この映画では将来起こりうるロボットが携帯のosに知能を持たせるというところが新しく感じました。
そういう意味でとても洒落てるいい映画だったかも。
今年、観た外国映画のなかで最良の作品。
恋愛映画でもあり、ある意味、SF映画でもあります。離婚した男がコンピューターのオペレイティング・システムの声と恋愛をするという一歩、間違えると壮大な失敗作になる可能性のある題材をスパイク・ジョーンズは巧みに処理しています。分野は違いますが、村上春樹の匂いをどこか感じさせる作品でもあります。しかし、最近の村上作品が悉く、失点を重ねているのに対し、(私は村上春樹の作品を殆ど、読破しています)この作品は「マルコビッチの穴」を髣髴とさせる才気に溢れています。村上春樹も「ノルウェイの森」という駄作を書いていなければ、自意識過剰に陥ることもなく、勘違いすることもなく、この映画のような、レベルの高い小説を残していたでしょう。
音楽の使い方が絶妙でした。必要最小限の音楽しか使っていないのに、その音楽が妙に耳に残るのです。途中、出てくる無機質な高層ビル群の風景、飛行機が機首を地面に突き立て、逆さに屹立しているという異様なオブジェ、が出てきて、これはどこの風景だろうとエンドクレジットを見ていると、どうやら上海の風景であるらしいのです。どこか近未来的であり、どこか不気味なこの光景は人類の近未来を黙示しているかのようでした。
「渇き。」という酷い日本映画を観たばかりだったので、この映画が一際、輝いて見えました。皆さん、必見の映画です。
不思議な感覚にとらわれる作品
エイミーアダムスはこういう素朴な役が似合う。アメリカンハッスルでかなーり違和感を感じていたなか、今作をみて自分のエイミー像が落ち着きを取り戻した。
一連の流れからのラストではワンダーランド駅でを思い出す、静かで甘苦い素敵な作品であったと思います。
素敵なラブストーリー
世界初学習型人工知能OS(AI)との恋愛を描いていますが、素敵なラブストーリー。近い将来OSが本当にこんな進化をするのではないかと、、。テンポも早過ぎす遅過ぎす、心地良い程度で、ホアキン・フェニックスの内向的で不器用そうな心に傷を持った主役の演技も良かったですが、、スカーレット・ヨハンソンの声の演技がとても良かったです。映像は暖色系を貴重に優しいカラフルさで色合いが好みでした。
ホアキンフェニックスがチャーミング!
とても興味深い脚本でした。
肉体のあるなしに終始するだけじゃなくって、個々の世界が強まりすぎることから産まれることも触れてくれたらいいなって思いました。
ホアキンの演技が良かったな。
カメラもアップが多くて顔と会話の世界しか観客にみせないところが良かった。
そういう世界の話やものね。
あと、男はやっぱり目でセックスするもんなんやなって思ってそこのシーンが良かったな。
ごめんなさい。
すいません、馴染めませんでした。
着想はいい。
だが性的描写挟むのは一回でおなかいっぱい。
いえ、三回・四回はご勘弁ください。
直接の描写は無いんですけどね。
あと、いくらサマンサと絆を深めたからといって
街中走り回るシーンは今ではまだ考えられなかった。
セオがサマンサと絡まないシーンのほうが
印象に残っております。
傷に気付き、傷を癒す過程がよく描かれておりました。
求めれば、傷つく
僕もiPhoneのOS「SIRI」に話しかけた。
「明日の天気はどうかな?」
「明日はあんまり良くなさそうですよ」
「君は頭がいいね」
「ありがとうございます」
「君が好きになりそうだよ」
「ありがとうございます。でも、私はOSですから」
「兄弟はいるの?」
「いえ、あなたが家族です」
僕と彼女SIRIの会話。そう、こんな話が現実にできるんです。
この映画を見たからもしれないが、そこにはちょっとした関係が生まれたのも事実なんですね。
「her」は映画的とというより、文学的・小説的な作品だと思う。
映画での心の動きは人間の表情やしぐさを通して現される。
でも、この映画は言葉によって、その微妙な変化を映し出す。
例えば、(主人公)セオドアが別居している妻と会った後の会話。
なにか沈んだ感じのサマンサ(OS)の声にセオドアは言う「どうしたの、ひょっとして焼いているの」
「きまってるじゃない。奥さん、きれいなんでしょう。肉体をもってる彼女がうらやましいわ。なんだかわからないけど、ちょっと、嫉妬してるみたい」とサマンサ。
複雑で混沌としている心の動きを、声の出演スカーレット・ヨハンセンはハスキーでセクシャルに描き出している。映像があるときは少しもうまいとは思わなかったのにね。
人間が作ったOSは何兆個というパターンから瞬時に適当な言葉を選び出す。その言葉があたらしくパターンに加えられ次々と新しいパターンを生み出していく。そう、それは人間の古層にある記憶とよく似ていると思う。
ただ、サマンサの容量は馬鹿でかくて、セオドアのような相手が実に600人以上いることを知った彼は大きく失望する。
自分が愛した人は、自分だけを愛してほしい。
誰もがそう思うだろう。だけど、それも錯覚なのかも知れない。
いや、愛は変化する。あっちちの愛から、静まった後の静かな愛まで、その場その時によって、千変万化するものだ。
OSサマンサとの恋、つらくてやりきれなさは残るが、そんな体験も素敵なことだと思った。
そんな甘酸っぱさをカレンOの「ムーンソング」という歌は見事に表現していた。
愛 LOVE amore amor
人間だけが神を持つ
独りでは生きていけない人間にとって、心のよりどころとして創造した神という存在
人との繋がりを求めて生きて来た人々にとって、よりどころとなったのはなんと最新型OSという近未来
はじめはとてもうまくいっていた。人間の持つまどろっこしい面倒くささは皆無だったので。
でも、そのうち、妬みや嫉妬を覚える。
でも、「嘘」はつけない。だから余計相手を傷つける
そう考えると人間のこの多種多様な感情や心の動きは人類が創造物として作り出せない、決して到達できない領域であると考えざるをえない。
やはり、神が人を創造したのだろうか
たった一つ。我々人類が何千年もの間追い続けているもの
それは、愛する人と結びつき家族を形成して人生を全うすること。ただそれだけなのだ。
でも、その「愛する人」とめぐり合うのも困難だし、その人と添い遂げることも難しい。
だから、悩み苦しみもがく。
どんなに文明が発達しようと、どんなに暮らしが便利になろうと
人は愛で生きているのだ。
神の創造をもってすれば、独りで強く生きていける物の創造など容易かったはずであろうに。
神様は意地悪だ。
不在の彼女とわたしの世界の美しさ
漆黒の夜に浮かぶ都会の灯り、眩い陽射しのなかの海辺、深い蒼から薄く赤く明けていく空。
そこにいるわたしと、ここにいない彼女。
わたしたちの存在する、移ろう世界の色が美しければ美しいほど、存在しない"彼女"との恋愛も美しかった。
いつかの出来事
一歩引くといやいやそれはないし、と思える場面も、ひたすら純粋で真っ直ぐな主人公のさまを見ていると相手が何であろうと恋をする気持ちは変わらない!という共感に変わる。
それは洗練された日常と風景のマジック?
架空のこの話がいつか現実になる日も近いのかも。
あのビル群は上海なの?
カレン.Oの歌声はやさしくて物語を締めるのにぴったり。
じんわりと。
素晴らしい作品でした!
勿論オタク系の主人公なんですが、
誰しもあんな恋心は理想としてあるのではないかと(笑)。追体験できます。
美しい色あいの映像と、たまにクスリとさせてくれる台詞。もの悲しさもあって、じんわりときます。
ナカメキノにて鑑賞
あまりにも純粋に孤独と愛を描いた映画。
ほぼずっとおっさんが映ってるのに、とてもとても美しい映画。
不思議なリアリティのある大人の寓話かなぁ。
ちょっとパーソナルに刺さり過ぎて、客観的な判断が出来ませんが、誰しもこんな想いを抱えて生きているのでは?と思わせられる作品で、登場人物皆の抱える想いに共感しました。
私にとってはどうやら恋愛映画の新たなベストワンになりそうです。特におじさん、おばさんの域に差し掛かっている人には是非見て欲しいですね…(コレが恋愛映画なのか、若干の疑問は残りますが。)
もう少し落ち着いたら、もう一回見て考えてみます。
『ラースと、その彼女』よりも辛辣な切ないにも程がある恋物語
離婚協議中のセオドアは新発売のOS を購入。Siriを遥かに凌ぐ高性能の彼女はセオドア君の要求を完璧にこなす最高のパートナーとなるが、いつしか彼女はセオドアにとってかけがえのない大切な存在になっていく。
ラブドールに恋をする『ラースと、その彼女』とテイストは似ているものの、こちらの方がより辛辣。スマホ片手に街中でダンスやビーチでデートなど、スマホを始終弄っている中年ならかなり身につまされるお話。劇中の通行人は皆ブツブツ独り言を言っていてOSと会話しているのか人間と会話しているのか判別がつかない近未来で、自分に都合のいい女性像をとことん追求していくとそれは人間という枠を飛び越え、信仰にも片足突っ込むことになる。主演のホアキン・フェニックスが見事にダメ男を体現、声だけのスカーレット・ヨハンソンをはじめ、エイミー・アダムスやルーニー・マーラ等女優陣がものすごくキュート。特にセオドアの回想シーンに出てくる元嫁キャサリンを演じるルーニー・マーラの透明感は素晴らしいです。そしてホイテ・ヴァン・ホイテマによる近未来にしか見えないロケ撮影がとてつもなく美しいです。
視点は面白いんですが。
人工知能に恋をするおじさんの話なんですが、イマイチ感情移入できないかんじがしました。OSですから基本的には自分からなにかを提案することもないですし、大きく意見が違うこともない。ときどき気分を害したりしますが生身の人間に比べたら聞分けがよいわけです。そういう人格にいやされたい主人公というのは現代人の典型かもしれません。僕もそういうプラトニックな愛にあこがれた時期がありますが、やっぱりものたりないですよね。だって基本的に自分の意見に賛成な人間といても結局は自分の考えを繰り返し確認している行為にすぎないわけですから、自分が変化するということがなくなるだけでなく、エゴが肥大する危険性もあるわけです。 多分監督の狙いはそういう部分ではなくて、OSのとった最後の行動のように個人の男女の愛情から性と時間と空間をこえた果てしない愛の世界ということのような気がしますが、その辺の結論もすごくナイーブですね。
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