「コーエン兄弟は手厳しい、巧い、そして意地悪。でも好き(ハート)」インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
コーエン兄弟は手厳しい、巧い、そして意地悪。でも好き(ハート)
クリックして本文を読む
私は、人が不幸になる瞬間を知ってる。
それは、夢を見始めた時だ。
夢に届かない自分自身を、嘆き悲しむ。
まるで、スペインの祭りのよう。
全速力で走ってくる牛の頭を、途中でスパンと斬り落とす。
斬り落とされた牛は、そのまま数十メートル走ってから倒れる。
みんな頭なんかないのに、まるであるように走っている。
あのね、頭はもうないんだよ。
なんて手厳しい作品!
鳩尾が痛くなりました。
絶妙のタイミングでドアから逃げ出す猫。
絶妙のタイミングで窓から逃げ出す猫。
絶妙のタイミングで見つかる猫。
絶妙のタイミングで間違われる猫。
絶妙のタイミングで車のシートで見送る猫。
絶妙のタイミングで道路を横切る猫。
絶妙のタイミングで腹の上に乗る猫。
あれ?これって猫が主役だっけ?
いや違う。
可愛い顔して罵り言葉を吐くキャリーマリガンの、絶妙のタイミングで発せられる「Fu○k you」がある。
主人公はこの猫でもあり、猫は主人公の人生を表している。きっと。
ルーウィン(オスカー・アイザック)は、自分の歌しか唄わない。
他人の歌にはヤジを飛ばす。
曲に対する妙な拘り、口先三寸、掴み所のないダメ男、でも歌は上手い。
だがしかし、逃し続けるタイミング。
頭はあるのか?
ないのか?
「何様だよ」
ラスト、黒い後姿の男が発する言葉が、この主人公を代表する「ワナビ」的な人達に投げつけられたような気がした。
家康さんが言ってた。
人生に大事な事を5文字で言えば「上を見るな」
7文字で言えば「身のほどを知れ」
コーエン兄弟は手厳しい、巧い、そして意地悪。でも、好き(はーと)
観終わった後、思わず首筋を撫でる。
私の頭は、まだあるのか?
コメントする