「まるでベストアルバムのような」STAND BY ME ドラえもん CRAFT BOXさんの映画レビュー(感想・評価)
まるでベストアルバムのような
「ドラえもん」の中でも人気の高いエピソードが矢継ぎ早に登場しながらストーリーが展開していく。
ドラえもんが初登場する『未来の国からはるばると』から始まり、ジャイアンと一騎打ちして「僕だけの力で勝たないと、ドラえもんが帰れないんだ」の名場面が登場する『さようならドラえもん』、そして『帰ってきたドラえもん』まで。その序盤から終盤を結ぶのは、のび太としずちゃんのLOVEエピソード『雪山のロマンス』『のび太の結婚前夜』など。
てんこ盛り過ぎて、正直お腹がいっぱいだ。音楽でベストアルバムを聞いているような満腹感と、それと同時に「これはこれで良いけど、やっぱ所詮はベスト盤」という違和感。
ここまであからさまに有名エピソードが並んでいると、「あ、次はあの台詞か」と身構えてしまい、それはそれで感動できるんだが、しかし残念ながら目新しい感動は何もない。
やり過ぎ感があるのは、例えば、最終的には『帰ってきたドラえもん』のエピソードで物語が終わるんだが、ここまでラストシーンまで予定調和で進められると、やっぱり「やり過ぎじゃね?」という印象は強くなる。子ども向けとはいえ、一つの作品として捉えるなら、ドラえもんが未来に帰るところで終わって余韻を残す方法もあったはずだが、本作は、そうした事よりも、ドラえもんの名場面をこれでもかと切り貼りしている。
「ドラえもん」の映画版といえば、やはり第一作の「のび太と恐竜」が今も印象に残る。当時、小さなエピソードを長編アニメとして成り立たせたことに、素直に感動した。そういう感動は、本作では全くなかった。そこは大いに物足りない。
さて、3Dアニメについては、まぁ及第点という感じではないだろうか? 日本でもハリウッド並みの3Dアニメは十分に可能である事を、八木竜一と山崎貴の両監督は、ちゃんと示せていた。
カメラワークや構図を含めて、しっかりディズニーを含めたハリウッドアニメを意識した作りになっており、そこは好感。