家族ゲームのレビュー・感想・評価
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なんでテーブルひっくり返すの?
まともに向き合わない家族に一石を投じた家庭教師
夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ…。
高校受験を控える中学3年生の沼田茂之の元に、家庭教師の吉本がやってくる。吉本の登場により露わになる沼田家の歪みを、ユーモラスかつシュールに描いたブラック・コメディ。
家庭教師の吉本勝を演じるのは『人間の証明』『野獣死すべし』の名優、松田優作。
茂之の父、孝助を演じるのは『黒い十人の女』『細雪』の伊丹十三。
「夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ…」
「誰がそんなもん書けって言ったんだよ( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン」
という映画、それが『家族ゲーム』。
「こんな映画のなにが面白いの?櫻井翔くんのドラマの方が100倍面白かった!」
という意見もあるでしょう。実際自分もこの映画の何が面白いのかよくわからない…。
でも大好きなんです、『家族ゲーム』。今まで観た邦画の中ではベスト3には入ると思う。
10代の頃に初めて観て、こんな映画が存在して良いのか!?という衝撃を受けた。
冒頭からクライマックスまで徹底して理不尽でシュールな展開が続く。なんと言って良いのやら。
一般的な中流階級の核家族と学歴信仰。
それらが内包する、普段は目を背けがちなグロテスクな問題点を、吉本の一歩引いた目線から描き出す戯曲的なコメディ。
家庭内の不和やいじめ、受験戦争などの身近な問題をリアリスティックかつシリアスに描く映画は数あれど、それらを残酷に突き放し笑いに変える作品が一体どれだけあるのだろう。
松本人志のお笑いや、松本大洋の漫画と同じ匂いがする(もちろん松本人志や松本大洋の方が後の時代の人物なんだけど)。
この映画の面白さを極限まで引き出しているのは、やはり吉本を演じた松田優作!
日本映画界永遠のアイコン!男が惚れる男!日本が世界に誇る最高の俳優!キング・オブ・クール!
本作の優作の演技、最&高!
常に学研の植物図鑑を持ち歩く無表情な男。言葉は少なく声は小さい。酒だろうとジュースだろうと飲み物を一気に飲み干す癖があり、とにかくよく食べる。冗談なのか本気なのか、ホモセクシャルな態度を茂之にも孝助にもみせる。暴力的でやる気があるんだかないんだかわからない、何を考えているのかもさっぱりわからない。こんなのが家庭教師としてやってきたら怖すぎる。
こんなわけわからないキャラクターを、完璧に演じ切る松田優作凄すぎる。古今東西見廻しても松田優作以外に吉本を演じきれる役者が存在するのか!?
吉本が茂之にコブラツイストを仕掛けるのは明らかに『ルパン三世 カリオストロの城』のオマージュ。優作は『カリオストロ』をリアルタイムで観て、非常に気に入ったという話を何処かで聞いたことがある。
『探偵物語』の工藤ちゃんはルパンを手本にキャラクターを膨らませていったらしい。そのため、『探偵物語』の1話目で工藤は少年に『ルパン三世のおじちゃん』と言われている…。以上、どうでも良い豆知識でした。
クライマックスの食卓はまるで「最後の晩餐」のよう。
キリストの位置に座している吉本が、愚かな使徒たちを打ち斃し、食卓をひっくり返して去ってゆく。
「右の頬を打たれたら、左の頬をも差し出せ」とはマタイ伝に記されたキリストの言葉だが、本作における救世主はそんな甘っちょろいことはしない。右の頬を打たれたら容赦なく右の頬を打ち返す。
現代人の愚かさには、救世主ですら匙を投げるというアイロニカルなメッセージは令和の世でも強烈な鋭さを保ち続けている。
「家の中がビリビリ鳴っていてすごくうるさいんだ」という茂之のモノローグから始まる物語は、ヘリコプターの騒音が鳴り響く食卓で幕を下ろす。
音から始まり音で終わるという円環構造は美しく、また物語の始まりと終わりで問題は一切改善していないことを表している。
凄くうるさい騒音の中、それを気にすることなくうたた寝をする一家の姿とともにエンドクレジットが流れる。
家族はもちろんのこと、冒頭の段階では「うるさい音」を意識していた茂之ですら、最終的には騒音について無意識になってしまっている、という皮肉かつ悲壮感漂うラストには一抹の寂しさを感ぜざるを得ない。
過剰なギャグを用いることなく、映画全体をコメディに仕立て上げる森田芳光の手腕には感服するしかない。これこそコメディ映画のあるべき姿だよ!
わかったか、今の日本映画界ででかいツラしている〇〇とか〇〇!
まさに「僕が観たい日本映画」の完成形。「ATG」のような攻めの姿勢の映画会社がまた出て来てくれればなぁ。
万人にオススメする映画では決してないし、つまらないという意見も理解できる。…が、こういう作品が観たくて俺は映画を観続けているんだよ!!
シュールさの中にあるリアル
森田監督のセンスに脱帽
松田優作主演の異色作
家族という役を演じるロールプレイング・ゲーム
みんな人として向かい合わない家族の姿
もちろんそれをあのテーブルが映像で表現している
半熟の目玉焼きを吸う父親、それは未だに母乳を吸う代償行為をする幼児性の表現だ
これも冒頭で見せる
しかも吸えなければそれを妻に非難するのだ
バット殺人事件を恐れ息子の反抗という通過儀礼から逃げ、それを正面から受け止める父親の役割を家庭教師を雇い金で解決を得ようとする
その家庭教師を自分の代わりに学校に行かせる母親
彼女は子供にも近隣の主婦にも優しいようで実は自分のことだけが大事なのだ
車の中でもっと遅く産めば良かったと、二人だけの新婚生活を楽しみかったといい子供のことは実は邪魔だと思っているのだ
この母親は戸川純が演じる同じ団地の精神不安定な主婦から、もっと人に共感できる心を持つべきだとなじられる
そして椅子を動かして向かい合わせで座りこの家のテーブルの異常さを暴露する
この夫婦は、夫婦の会話を家庭ではしない
外の車の中で済まそうとするのだ
団地の家が狭いからだけではない
ラストシーンに映る二人の寝室を持つにもかかわらずそうする
家庭を拒否しているのだ
父親と母親では有るが、まだその自覚がないのだ
子供が実は邪魔なのだ
それでも仕方なく家族を演じるロールプレイング・ゲームをしているのだ
それがタイトルの意味だ
それでも母親の愛情を取り合う子供達
兄はレコードのやり取りで愛情を確かめようとするが弟が帰宅するとそれを共有しようとせずに席を立つ
弟は成績が良くなると気分を悪くするやつがいるというが、それは実はクラスメートではなく兄のことだ
兄は弟が両親の関心を集めればやる気を失う
親を心配させて関心を集めたいのだ
冒頭で弟がやる気を出せないのは同じ理由だ
兄弟で助け合うとか励ますとかの発想がそもそも欠落している
兄弟もまた両親と同じく兄弟というロールプレイング・ゲームを演じているのだ
弟は母が来客中であっても、そこに急に電話が鳴り出しても、自分の話を聞いてくれと駄々をこねる
その上、来客の前で着替えて裸になって追い返そうとする幼児性をみせる
鉄球のジェットコースターのおもちゃもその幼児性を表現している
これで中学三年なのだ
舞台はまだ工場や倉庫あとは空き地だらけの頃の晴海の埋め立て地
この土地は生活実態を感じさせない
そこに家庭教師は水上バスで竹芝桟橋から通う
つまり普通の家庭が住むところとは別世界だという映像表現だ
家庭教師の住む部屋には花もあり、恋人がいて彼とイチャつく安らぎがある
背景には水槽の泡の水音がしており無言であっても潤いのある生活があることを示す
これも沼田家との対比をなすものなのだ
松田優作が演じる家庭教師
彼は結局父親と母親の両方の役割を果たす
弟は成長し成績は上がり、クラスメートから告白され、土屋にはケンカで勝ち、ついには志望校合格という奇跡を起こす
彼はこのゲームを演じている家族を救いに降臨したキリストということなのだ
だから頬を打たれるシーンが有るわけだ
そうして合格祝勝会は最後の晩餐を模すわけだ
最後の晩餐の席でキリストはこの場に裏切り者がいると言う
それは誰か?
本作では家族全員なのだ
それで神である彼は家族を罰し、その象徴であるテーブルをひっくり返すのだ
彼が去ったあとに残された偽りの家族は初めてバケツを中心に片付けを協同して行うのだ
ではラストシーンのヘリコプターは何か
救世主は去り戻らない
天空に舞うのは雷鳴でも神の子の降臨を伝える天使でもない
救世主に去られたこの家族は結局家族の意味がないことを知ってしまったのだ
眠っているのも死んでいるのも変わりはしないのだ
父の姿はない
はじめからいないのと同じなのだ
この家族は私達の写し鏡だ
戦後の核家族は大なり小なり似たようなものだ
本当に家族一人一人に向き合っているのだろうか
それを問うているのだ
自分は本当に親であったのだろうか?
汗がでる思いだ
この兄弟は団塊ジュニアの走りになる
21世紀の今日、この兄弟は本作の両親の年代よりも年配になっている
今では単身赴任も当たり前の世の中になっている
彼らは、私達は、あなたは、本作のような家族ゲームをまた再演してはいないだろうか?
というよりこの家族の異常性すら、どこが異常なのか感じとれもしなくなってはいないだろうか
遂にはさらにバラバラになって個となり、結婚すらせずに家族をもたないものも、この世代になると多いのだ
いやひょっとすると、いまだにあの子供部屋にいるのかも知れない
エンドレスで家族ゲームを演じ続けている人すらいるかもしれないのだ
本作は戦後の核家族の実相を描いただけでなく、予言にまでなっているのかも知れない
この森田芳光監督の見事な演出
松田優作の怪演
数々の映画賞を総なめにするはずだ
奇しくも同じ1983年初夏に公開された映画に、市川崑監督の細雪がある
その作品は反発しあいながらも互いに気遣う本当の家族の物語だ
戦前と戦後の二つの家族の姿
偶然にしても見事な対称をなしている
映画の神の見えざる手による必然なのだろうか
松田優作がすべて
城南大学なんだから・・・最後はそこに落ち着くのか。とにかく最後の晩餐のシーンは凄かった。松田優作ってのはこういった長回しのパートが得意なんだろうなぁ。
教育問題的には校内暴力が目立っていた頃で、バット殺人など家族の絆が取り沙汰されるバブル前夜の時期だ。スパルタ教育も戸塚ヨットスクールのニュースが毎日流れていたように記憶している。家庭教師の松田優作は、植物図鑑をいつも携えていて、勉強なんて教えない。なにしろ「奥の細道」さえロクに読めない大学生で、ビンタをかまし、恐怖で生徒を押さえつけるタイプなのだ。
ストーリーよりも、淡々とした家族生活をシュールに描き、いつ何が起こってもおかしくない家族。ATGだということもあり、低予算を逆手にとったイメージ。最近の森田監督映画はひどいもんだけど、初心に帰って良作を作ってもらいたいものです。
30年ぶりに観た。カメラワークとか間の取り方なんかそれまでにない新...
不気味な映画
謎な表現が多くて、よくわからないシーンが多いけど
なぜか惹きつけられ最後まで真剣に見てしまいました
見終わった後あれはなんだったのかなどを
考え、調べたりするんですが
明確な答えがあまり出てこないのがいいのか悪いのか…
監督がいろいろ計算して話を作ってるならすごいなー!と思うのですがどうなんだろう
原作を読んだら理解できるんでしょうか…
調べたら原作通りではないみたいですが
ラストの
息子2人と母親がヘリの爆音の中でうたたね?
するシーンがあるせいで余計わかりにくくなった
食事シーンで終わっていたらまだ皮肉なコメディーよりだったのに
あのラストシーンのおかげ?でより難解さ、そして不安感が増す感じがした
お兄ちゃんが占いや星より空手に興味を持ちだしたり、
家庭教師もいなくなったし
なんか暗い未来しか見えない…
なんじゃこりゃー 何をどう見ればいいのか、何がいいたいのか、さっぱ...
やっと見つけた。ここまで大好きだと思える映画。
やっと見つけた。ここまで大好きだと思える映画。
場外ホームラン級に好きです。
ブラックジョークが散りばめられていて、
くすりくすりと笑ってしまう。
最後のカオスな食卓のシーンとか、笑いっぱなし。がははって笑いではないけど。
みんな少しずつズレてる沼田家。そこに、これまた少しズレてる家庭教師がやって来る。
みんなとても自然な演技で、学校の先生なんてセリフかんでたけど、そこがまたリアルで大変良い。
最近の映画は意味のないシーンを雰囲気つくりのために挿入したりしているけど、この映画にはそういった無駄なシーンが一切ない。早送りするタイミングが全くない。退屈することのない、ちょうどいいスピード具合もまた良い。
2011/1/19 @メディラボ
なんだこの異様感…
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