「夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ…。」家族ゲーム たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ…。
型破りで奇妙な家庭教師、吉本の出現により露わになるとある核家族の歪みを、シニカルかつシュールに描き出したブラック・コメディ。
監督/脚本は『の・ようなもの』の森田芳光。
家庭教師、吉本勝を演じるのは『人間の証明』『野獣死すべし』の名優、松田優作。
吉本の教え子である沼田茂之の父、沼田孝助を演じるのは『黒い十人の女』『細雪』の伊丹十三。
「夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ夕暮れ…」
「誰がそんなもん書けって言ったんだよ( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン」
という映画、それが『家族ゲーム』。
「こんな映画のなにが面白いの?櫻井翔くん主演のドラマ版(2013)の方が100倍面白かった!」
という意見もある事でしょう。実際自分もこの映画が面白いのかどうかはよくわからない…。
でも大好きなんです、『家族ゲーム』。今まで観た邦画の中ではベスト3には入ると思う。
10代の頃に初めて観て、こんな映画が存在して良いのか!?という衝撃を受けた。冒頭からクライマックスまで徹底して理不尽でシュールな展開が続く。なんと言って良いのやら。
一般的な中流階級の核家族、そして彼らが抱く学歴信仰。それらが内包する普段は目を背けがちなグロテスクな問題点を、吉本の一歩引いた目線から描き出す戯曲的なコメディ。
家庭内の不和やいじめ、受験戦争などの身近な問題をリアリスティックかつシリアスに描く映画は数あれど、それらを残酷に突き放し笑いに変えるのはこの作品くらいのものなんじゃないだろうか。他ジャンルで言えば松本人志のお笑いや松本大洋の漫画と同じ匂いがするが、彼らの作品の持つある種の不条理さはこの映画からの影響だったりするのかも…あくまでも想像ですが。
この映画を語る上で外せないのは、やはり吉本を演じた松田優作の演技だろう。
日本映画界永遠のアイコンであり、男が惚れる男の中の男。ハードボイルドからコメディ、ポップから文学的な役どころまでを見事に熟す天才俳優である。
本作の優作の演技、最&高!!
常に学研の植物図鑑を持ち歩く無表情な男。言葉は少なく声は小さい。酒だろうとジュースだろうと飲み物を一気に飲み干す癖があり、とにかくよく食べる。冗談なのか本気なのか、ホモセクシャルな態度を茂之にも孝助にもみせる。暴力的で体罰も辞さないが教育熱心ではなく、だからと言って嗜虐的でもない。そして何を考えているんだかさっぱりわからない。こんなのが家庭教師としてやってきたら怖すぎるわっ😱
こんな意味不明なキャラクターを、完璧に演じ切る松田優作凄すぎる。古今東西見廻しても松田優作以外に吉本を演じきれる役者が存在するのか!?
クライマックスの食卓はまるで「最後の晩餐」の様。
キリストの位置に座している吉本が、愚かな使徒たちを打ち斃し、食卓をひっくり返して去ってゆく。
「右の頬を打たれたら、左の頬をも差し出せ」とはマタイ伝に記されたキリストの言葉だが、本作における救世主はそんな甘っちょろいことはしない。右の頬を打たれたら容赦なく右の頬を打ち返す。
現代人の愚かさには、救世主ですら匙を投げるというアイロニカルなメッセージは令和の世でも強烈な鋭さを保ち続けている。
「家の中がビリビリ鳴っていてすごくうるさいんだ」という茂之のモノローグから始まる物語は、ヘリコプターの騒音が鳴り響く食卓で幕を下ろす。
音から始まり音で終わるという円環構造は美しく、また物語の始まりと終わりで問題は一切改善していないことを表している。
凄くうるさい騒音の中、それを気にすることなくうたた寝をする一家の姿とともにエンドクレジットが流れる。家族はもちろんのこと、冒頭の段階では「うるさい音」を意識していた茂之ですら、最終的には騒音について無意識になってしまっている、という皮肉かつ悲壮感漂うラストには一抹の寂しさを感ぜざるを得ない。
過剰なギャグを用いることなく、映画全体をコメディに仕立て上げる森田芳光の手腕には感服するしかない。これこそコメディ映画のあるべき姿だよ!
わかったか、今の日本映画界ででかいツラしている〇〇とか〇〇!
まさに「僕が観たい日本映画」の完成形。「ATG」のような攻めの姿勢の映画会社がまた出て来てくれればなぁ。
万人にオススメする映画では決してないし、つまらないという意見も理解できる。…が、こういう作品が観たくて俺は映画を観続けているんだよ!!
※ 余談だが、吉本が茂之にコブラツイストを仕掛けるのは明らかに『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)のオマージュ。優作は『カリオストロ』をリアルタイムで観て、非常に気に入ったのだとか。
実は『探偵物語』(1979)の工藤ちゃんはルパンを手本にキャラクターを膨らませていったらしい。そのため、『探偵物語』の1話目で工藤は少年に『ルパン三世のおじちゃん』と言われている…。以上、どうでも良い豆知識でした。
ぷにゃぷにゃさん、コメントありがとうございます♪
この映画のコメディセンスがとにかく好きで、ついつい力が入ったレビューになってしまいました😆
○○は想像にお任せします💦
いや〜、去年も大活躍だったなぁ…。