「この映画は二度と撮影できない」アクト・オブ・キリング nok0712さんの映画レビュー(感想・評価)
この映画は二度と撮影できない
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1960年代にインドネシアで起きたクーデターで起こった虐殺で、実行者として大きく関わっていた男の話。実行者本人を起用し、当時を再現した映画撮影を行っていくのだが、撮影を進めていくうちに男は途方もない後悔の念を抱くことになる。
男は日本でいえばヤクザのような存在。
皆から恐れられ、取り巻きから尊敬され、誰も否定をしない。
男は当時の出来事を嬉々として語り、ここで殺した、こうやって殺したという話を誇りを持ってカメラに語り、こうした方がリアルだ、こうやって苦しむんだという演技指導を繰り返す。
ところが虐殺のシーンを繰り返し撮影していくうちに、男は押し黙る時間が増えていく。
印象的な村民虐殺のシーン。一般エキストラを雇い映画撮影を行うが、当時を思い出し足腰の立たなくなる老人が居たり、父母の危機を感じ本気で号泣する子供がいる。
男は初めて自分の行った事を後悔する。
この映画の冒頭シーンで男が嬉々として語っていた建物の屋上に場面が移り、男はその場で嘔吐する。
最後、男は編集された映画を見るが、虐殺シーンでは目を背け、滝を背景にした踊りのシーンでは「良い場面だ」と言う。
男の誇らしげであり嬉々とした態度からその後の吐き気を催す後悔という瞬間を撮影したものとして、この映画は唯一無二となるだろう。この男は二度と撮影は受けないだろうし、受けたとしても二度と同じ反応は示さない。
この映画はもう二度と撮影できない。
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