「虫けらが人を虫けらのように殺していた実話」アクト・オブ・キリング 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
虫けらが人を虫けらのように殺していた実話
クリックして本文を読む
軍事クーデターによって樹立された、現インドネシア政府。なんともまあ、彼らは品性の欠片もなく、欲望をさらけ出し、多くの、あまりにも数多くの人(おそらくほとんどが罪のない)を虐殺してきた。それを、うれしそうに再現してみせる。しかも、稚拙なB級ホラーのゾンビのようなお粗末さなメイクと演技で。
彼らは、ただのギャングではないか。こんな国家がいまだ存在することの恐ろしさに震える。
この映画、ドキュメンタリーとして撮影を続けながら、主人公の白髪の老人の心理に変化が現れてくる。
殺される側を演じたあたりから、それまで嬉々として、自分の孫にまで殺人を自慢していた彼の表情が曇りだす。そして、処刑現場でその殺人シーンを解説しながら、突如えずいた。何度も。しかし、吐こうにも、胃の中は空っぽらしい。たぶんもう、ひとりのときに散々吐いているのだ。ようやく、罪の意識が芽生えたわけだ。遅いけど。
その姿をうしろから捕らえ、消えていく。このシーンが、この映画としての救いだった。
コメントする