「クスリと毒づく」ダラス・バイヤーズクラブ しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
クスリと毒づく
毒付く男とクスリ、といえば、やすし師匠か、トニー・モンタナぐらいしかいなかったわけで、本作のマコノヒーも、繊細にして、粗野に生きる。関係ないけど、その風貌は、「悪魔のいけにえ」のヒッチハイカー。
レトもマコノヒー並に、変化する俳優として有名だったわけで、この辺の役どころは彼にとっては、もろ守備範囲。レノンからボランへの心変わりにはニヤリ。しかし80年代でテキサスでボラン、というのはどうなんだろ。
本作は、一人の男のやりたいことをやる、一貫してその視点。
一人の男にのみ徹底して視点を置くことがこの作品の強みでもあるが、同時に作品の吸引力を損なっている弱みでもある。
物語は、事実だろうが、あまり社会風刺等、突っ込んだ内容ではなく、いささか一方的な論理でしか語っていない。第一、そもそもうまくいくはずのないクラブ運営ではある。
人は過ちから学ぶ。しかし、取り返しようのない過ちはある。カジュアル・セックスから得る喜びは、得難いものだが、それを責めることでは何も解決しない。
彼のこれまでのだらしない生き方には共感できない、という考えもここでは意味を持たない。
この映画の見どころは、今を生きる男の、自分を信じる心とその力強さにある。
T-REXの「LIFE IS STRANGE」
ラストのロデオで見せる姿は、今を生きる男の、自分を信じる心とその力強さを体現した男の勇姿。その姿は見た目以上に太くたくましい。
追記
映画でしか見たことのない俺だが、テキサス、カウボーイというと、上記のヒッチハイカー、黒人嫌い、ホモ嫌い、という、偏見のカタマリのイメージがある。
この映画は、そんなオレのような人間に対する、テキサス魂の反論そして、その自戒の念が込められているように思う。