「ロクデナシ野郎が国を動かす」ダラス・バイヤーズクラブ ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
ロクデナシ野郎が国を動かす
予備知識を殆ど排除して観に行ったのですが、まさか、こんな物語展開だったとは……。いやはや全く想像してない方面にストーリーが転がって行ったので、ちょいと驚いちゃいました。
あの、何でしょうね。や、すいませんね。俺、本当に何の捻りも無い物語だと思ってて、ゲイカップルがHIV発症して自分の人生を呪いながら痩せ細って壮絶な最期を迎える、的な映画だとずっと思ってて。全然違いましたね。トンデモ無かったです。
エイズになって哀しいな、死んじゃうな、には全然ならなくて。やられっぱなしじゃ終わらねえ!ていうね。
主人公マシュー・マコノヒー扮する電気技師のロン。自分がエイズだと知り、搬送された病院先の医者の心ない仕打ちに苛立ち、とある薬が効果絶大だというのに本国では全然承認されない矛盾とその制度に激しい怒りを覚えて、遂に凄まじい反撃に打って出るっつー、ちょいと爽快感まで感じてしまう一発逆転?劇に物語は舵を切る訳ですよ。
もっと詳しく言うと、このロンさんがね、最初はどうしょもないロクデナシ野郎だったんです。だったんですが、皮肉なことに、本当皮肉なことにエイズになった途端に天才的な商売の才覚を発揮しちゃって、そこからいつの間にやら世評やHIV患者の意識や国の機関までをも巻き込んで、その大きなうねりを国家レベルで起こさせちゃうという、彼の孤軍奮闘を描いた熱いストーリーに発展してっちゃうんですよね。そういう物語なんです。そこにちょいと驚いた訳です。
その商売を始めるに当たっての相棒がジャレッド・レト扮するトランスジェンダーのレイヨンなんですけど、まあこのジャレッド・レトもね、彼もまた役者魂が凄かったんです。マコノヒーとレトで一体合計何十㎏痩せたんだ?てくらいにガリッガリ。でも、それをこれ見よがしに、ほらどうだ!と見せつけるのではなく、演技に意味を持たせる為だけにというか、それのみを目的として痩せたというかね。
自然に、違和感なく、リアルに、さり気なく。それがこの映画に強い説得力を与えてました。
ハッキリ言うと、お涙頂戴モノじゃないです、この映画。兎に角、格好よくて熱いのですよ。
それに、これ何と実話がベースだって言うじゃないですか。尚更、熱くさせてくれますよね。
アカデミー賞で主演と助演を獲ったのも、納得です。