「田舎町が舞台の地味な映画だが後味悪く重い」ミスティック・アイズ mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
田舎町が舞台の地味な映画だが後味悪く重い
2011年イギリスの映画ですが、日本では「未体験ゾーンの映画たち 2014」で上映された作品のようです。
夫デビッド(ベネディクト・カンバーバッチ)が子供時代を過ごした田舎町へ夫婦が引っ越してきて、妻ドーン(クレア・フォイ)は赤ちゃんを授かることを望みながら、夫婦仲睦まじく、静かに暮らしていたのだが、そこにデビッドの弟ニック(ショーン・エヴァンス)が突然現れて、ドーンはデビッドの知らない面を次々と知り、夫婦の間に不穏な空気がながれ、妻の疑惑が渦巻いていく話。
ジャンルはサスペンスのようですが、メリハリはあまりなく、大きな事件が起こるわけでもなく、尺の短い作品のわりには長く感じる作品で、どちらかといえば、文学の匂いがする映画だと思います。登場人物の台詞や表情などで進行していき、説明のようなものがないので、集中力を要します。集中して、意味を考えながら見ると、これはかなりゾッとするような映画でもあります。特にラストです。
ニックが現れた途端、兄弟が強く抱きしめ合って、再会を喜ぶのですが、何につけても、この兄弟(デビッドとニック)の距離感が短くて、異様な感じ。最初は弟じゃなくて、恋人なのかと思ってしまったぐらい。後になって、ニックが「兄さんは僕を支配していた」とドーンにつげ、いわゆる、共依存の関係だったのかとわかります。
妻の取った衝動的とも思える行動、それゆえ妊娠してしまって、他人の子であっても産むことを許す(促す)夫、水面下の思いがよく理解できませんでした。ラストがわかると、オープニングの夫婦が赤ちゃんを抱く光景が本当にこわ〜いです。あの後、夫婦はどうやって暮らしていくのか、あの子供の将来はどうなるのだろう。ひょっとすると、夫は赤ちゃんの父親のことを黙認して(借りを作ったということで)、妻を支配下に置くのかしれないとも考えてしまいました。しかし、このような夫婦はもしかしたら、案外いるのかなと思ったりしました。
主演の3人がうまかったです。ベネディクト・カンバーバッチが出演しているということから発見した作品ですが、ニック役のショーン・エヴァンスも何でもかんでも喋ってしまう純粋な危うさをうまく演じていました。クレア・フォイも存在感がありました。ベネディクト・カンバーバッチの微妙な表情が注目どころです。
う〜ん。これは大沢樹生には見せてはいけない映画かもしれません。