太秦ライムライトのレビュー・感想・評価
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追悼・5万回斬られた男
DVDで鑑賞。
5万回斬られた男の異名を持つレジェンド俳優、福本清三氏の初主演作である。斬られ役一筋50数年。福本氏の生き様をそのまま投影したような役柄に涙が溢れた。
一生懸命やっていれば、どこかで誰かが見ていてくれる。
時代劇が減っていく現実。居場所が失われる中、若者たちに希望を託し、一世一代最後の大舞台での斬られ様は、儚くも美しく散っていく桜花の如くで、心を揺さぶられた。
クライマックス、松方弘樹氏との立ち回りでは、熟達した役者魂がまさに刃のように火花を散らす。おふたりがすでに鬼籍に入られたことで、美しく流れるように繰り広げられるチャンバラをもう観られないと思うと涙がこぼれて止まらなかった。
常に謙虚であられた福本氏。あくまでも主役を引き立てる斬られ役に徹し、技を磨き続けて来た人生である。
その凛とした佇まい、役の上での壮絶な死に様はしっかりとフィルムに焼きつけられ、永遠のものとなった。
本当にお疲れ様です。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
[以降の鑑賞記録]
2024/09/22:DVD
※修正(2024/09/22)
泣けた。
おそらく、俺にその経験があるからだろう。
感動とは違う。切なかったり悔しかったり、応援してみたり色んな涙を流した。
日本一の斬られ役って事は、世界一って事だろ?
俺の先輩が福本さんを表した言葉だ。
事実、ラストサムライでの福本清三は世界一であった。
其れ程までに、この職種は狭い世界なのである。
日本の芸能界の時代劇という限定された世界で育まれてきた。
いや…更には、京都・太秦で。
時代殺陣を哲学し、美術は勿論、カメラや照明まで使って斬られ方を表現する職人がいる。
このスペシャリスト達がいたからこそ、世界はサムライを受け入れたといっても過言ではない。
彼らの背中には目があるのだ。
主役に相対しカメラを背負う時、絵の構図を最後に決めるのは斬られ役の人間だ。
主役もカメラも手出し出来ない。
2センチズレたら撮り直しだ。
そんな状況の中、そんな条件下の中、彼らは毎日のようにカットを成立させていく。
勿論、カメラの位置なんか確認しない。
振り向いたら即座にNGだ。
そんなとてつもない職人技を毎回求められ、いとも容易く量産していく。
観客は主役しかみない。
監督もプロデューサーも。
喝采を受けるのは、いつも真ん中の人間だ。
だがしかし、周りで斬られる人間がいなければ、その絵に臨場感と緊張感を与える斬られ役がいなければ、その喝采が生まれるはずもない。
その事を忘れてはいけない。
その斬られ役としての色んな葛藤や充実感が一杯詰まった映画だった。
「旦那…怖じ気づいたんでっか?」
普段の撮影でこんな台詞など聞くはずもない。
だが…胸がスッとした。
僕らはいつでも、その殺意をもって刀を握りしめていたのだから。
美しい映画
観終わった後、体がフワフワとなる、素晴らしい作品でした。
オープニングの映像でぐっと引き込まれ、最後の斬り合いそしてラストシーンがあまりにも美しく、スッと暗転し、そこでほーっとため息が出ました。
私が観た際、客席には白髪のお客さんが多く、その劇場の観客の中では20代の私が最年少のようでしたが、私が涙を拭いていると周りからもグスグスと泣き声が聞こえ、この時代が巡る映画を観ながらいろんな年代の人と感動を分かち合えているのを感じ、とても嬉しく思いました。
少し悪口なんですが、あのクソプロデューサーみたいなやつ、最後までクソでいてほしかったです。あの人は尾上さんが何か言おうが何かに気付いたり改心するようなタマじゃないはずです。工藤氏は最高でした!でもあの人がこれから間違いのないものを作っていってくれるようになると思えるし嬉しいです。
最も好きなシーンは、故郷にて、香美山さんが子供時代の自分と出会うシーンです。
香美山さんのような人になりたいです。
しかし、それにしても尾上清十郎もめちゃくちゃにかっこよく、なれるものならなりたいものです。
世界は美しいです。そう信じます。
終わり。
真っ直ぐな生き様
時代劇鑑賞経験ナシ、知識ナシ、ただいつかの福本さんの特集が気になっていて、という状態での今回の鑑賞。大変美しく憧れに満ちた素晴らしい作品に出会うことができた。福本さん演じる香美山の佇まいに静かに惹かれていく。言葉少なだからこそ、瞳が、皺が語る。何より最後の殺陣の直前の一言、最高にかっこいい。自分は今まで何をどのように成してきたか、そしてこれからは…福本さんの瞳に見透かされるようだった。こんな生き方、憧れる。初めて訪れた名演小劇場も、どこか温かみを感じる雰囲気が大変気に入った。素敵な映画の上映を、ありがとうございました。
先行上映のチケットいただいたので行ってみるか…
というなんだかなぁな映画好きのみなさまからすると石投げるぞコラな理由で観に行きましたが
行って本当によかったです
むしろ軽いノリで行って申し訳ありませんでした!!!と土下座しそうになる勢いです…
予備知識がほとんどないまま(Yahooのニュースで5万回斬られた男と言われた福本さんが初の主演と知る、総合格闘技の山本さんが出演している、あと公式サイトを見たぐらい)行ったものの
ぐいぐい映画に引き込まれていきました
しかし水曜日の夕方というのもあるのか観客は自分入れて二人でした
もっと多くの方に観ていただき評価されるべき作品だと思うのですが…←軽いノリで行っといて何を言うかと
特に涙腺が緩い方はハンカチ必須ですがマスカラつけていたら拭かずに流しっぱなしの方が逆にいいかもしれません
それか下まつげには塗らない方がいいかもしれません
というぐらい泣きました
泣きすぎて翌朝(つまりこれ書いてる今)目が腫れぼったくて困っています
そしてここからネタバレ要素ありです
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・ポスターにあるシーン
・(ここからネタバレ要素満載)さつきがヒロイン抜擢されたもののNG連発で女優やめます…と弱気になったところを香美山さんに彼ならでのやり方で励まされ勇気付けられるシーン
・ラストの殺陣で監督が香美山さんの肘が限界だからと一番見せ場のシーンカットを決めたけれど撤回を真っ先にお願いしたのが「え?この人が??」のシーン
・見せ場の殺陣に臨むにあたり香美山さんが全身全霊で立ち向かうためにすれ違いざまに挑発するところからラストまで
ここは確実に涙腺決壊しました
太秦に行きたくなる作品
自分の様に時代劇が好きな(好きだった)人なら、特にグッとくる映画だと思います。時代劇がそれほど好きでない人でも、ヒューマンドラマとして楽しめるかも知れません。
前者である自分は、NHKで放送されたメイキング番組(「UZUMASAに吹くハリウッドの風」だったかな?)を見てから、とても楽しみにしていました。この映画は、太秦撮影所において、ハリウッドで活躍してる日本人監督さんがあちらの映像監督を連れてきて、ハリウッド式の撮影を行って作られた作品です。
時代劇が下火となった、落日の太秦撮影所が舞台。
本作に登場する役者さんの数名は、実際に何十年も太秦撮影所で活躍してきた殺陣を得意とする大部屋役者さん。メイキング番組の中で、劇中の時代劇が打ち切りになるシーンの撮影後、主役の福本清三さんや同僚の峰蘭太郎さんが本当に泣いている様子を見て『この作品はある意味ドキュメンタリーだ』と思いました。
他にも木下通博さん、柴田善行さんといった東映剣会のメンバーが登場します。
終盤の殺陣⇒ラストシーンの流れは、ビデオで何度も見ましたが、本当に素晴らしいと思います。
劇場の大画面で見たいので、映画も見に行きます。
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