劇場公開日 2014年6月14日

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わたしのハワイの歩きかた : インタビュー

2014年6月13日更新
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榮倉奈々&高梨臨、ハワイで芽生えた変化と気づき

人は出会いによって刺激を受け、自分のなかで何かしらの変化が起き、それに気づくことで成長していく。榮倉奈々主演の映画「わたしのハワイの歩きかた」は、仕事も人間関係も恋も思うようにいかない女性編集者みのり(榮倉)が、取材を口実にハワイへ脱出。あるきっかけで出会ったハワイ在住の日本人女性・茜(高梨臨)と意気投合しパーティ三昧の日々を送るなかで、自分なりのハワイの歩きかた、人生の歩きかたを描いていく日常脱出エンタテインメントだ。「同性代の女優さんとの共演があまりないので、それ自体が刺激的だったんです」と言葉にする実力派女優たち──榮倉奈々と高梨臨。2人の出会いから生まれた、変化と気づきとはどんなものだったのか。(取材・文/新谷里映、写真/江藤海彦)

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出会った瞬間から「そこまで言っちゃうの?」というほど本音でぶつかり合う、みのりと茜。ハワイの空の下、ぴったり息の合った芝居をみせている、榮倉と高梨。性格は異なるものの2人共通して第一印象で抱いていたのは、いい意味で「緊張しない」相手、自然な自分でいられる相手であることだった。それがみのりと茜のキャラクターにも大きく反映されている。

「最初、高梨さんに抱いていた印象はクール、名前の“りん”という響きの印象なのか、凛としたイメージ、大人な女性のイメージだったんです。実際に共演してみたら、けっこうなロマンチシストでした。しゃべり方も、クマが好きっていうのも意外でしたね。でも、男気もあるんですよ(笑)」。リハーサルで顔をあわせたときに「変な緊張感が伝わってこない人だった」とも言う。同じように高梨も榮倉に対して「気さくで明るい女性」だとその印象を語る。

「先輩だし、もちろん会う前は緊張していましたけど、奈々さんから声をかけてくれたり、『ご飯に行こう』って誘ってくれたり。主演としての居方もそうですし、ときにはみんなが思っていることを代わりに言ってくれたり、いろんなところで救われていました。あと、ものすごく芯の強い女性だなって感じていて、それはみのりの中にもある芯の強さだと思いました」。

役柄が役者と同化する。それは、当たり前のようで実はとても難しい。今回、榮倉はいつもとは違う役作りの方法を経験し、役と同化した。それは前田監督の“ある行動”から引き出されたものだった。

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「ハワイに行く前に、みのりについて書かれた紙を監督からもらったんです。そこには、みのりの内面的なものからシーンの細かい流れまでびっしり書いてあって。その紙をもらった時点ですごいプレッシャー(笑)。監督の気合いを感じました。本来それを作るのは私たち役者の仕事、取られた! みたいな感じですね。だから、そこまで綿密に監督が抱いているものがあって、それをハワイで私たちが演じる理由は何だろうと考えました。台本に書かれていること以外で自分は何ができるか、それを探すのが私たちの仕事なんですけれど、今回はそれを超えなければならない現場で、難しかったですね」。その「何ができるんだろう」という不安や苛立ちがみのりの役作りを助けることとなり、結果「共感するというよりも応援したくなる」ヒロインとして日本映画の1ページに刻まれた。

前田監督とは2回目の仕事となる高梨にとっての挑戦は、もともと持っているコメディセンスをさらに開花させることでもあった。キーワードは「振りきる役、振りきる演技」。「100%の熱を100%出せる役だったので、毎回『茜の熱を出し切るだけ出しきろっ!』的な感じでしたね。前田さんはいつも細かく演出する監督なんですが、その通りにやるとそれはそれでイヤみたいで(笑)。演出を付けるだけ付けて、やってみて、でも本番は忘れてほしいというタイプというか。撮影しているときは、何回もNG出されるとイライラしてくるけれど(苦笑)、いま思い返してみるとそれが面白さだったのかなって。演じていて明確な答えが見えないって、面白いんですよね」。オールアップのときに高梨から「こんなに愛しい役はない」という言葉がこぼれてきたことからも、100%の熱を出し切ったことが伝わってくる。

また、今回は日本ではない異国での撮影。しかも約1カ月にわたる長期滞在。通常ではない環境によって得られたものも大きいと2人の女優は口を揃える。「完全に日常脱出でした。この映画の仕事以外ほかの仕事が入らないから集中できました」というのは榮倉。「ハワイに限らず、景色とか気温とかそういうものはもちろん影響してくるものだと思うけれど、みのりの場合は“ハワイに来ている私”という設定に浮かれているし、“外国人に囲まれている私”でも浮かれている(笑)。それを私自身も同じように堪能しようと思いました。と言いつつも、それも監督の要望だったんですけどね。とにかくたくさん要望があったんです(笑)」。

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ハワイ在住の役でありながらも、意外にも「ハワイは初めてだった」というのは高梨。いまではすっかりハワイが「好きになった」そうだが、そんなふうに思える背景にはハワイだからこそ生まれた俳優同士の交流があった。「日本と違って撮影時間が限られているので、撮影自体は大変だったこともあるけれど、本当に楽しい現場だったんです。時間の制約があったからこそ俳優同士で集まる時間も持てたし。チームワークは大きかったですね。東京で撮っていたら、撮影後は自分の家に帰るのが当たり前。でも、今回は毎朝同じロケバスに乗って同じホテルに帰ってきて、自然とみんなが集まってくだらない話をする。そのなかで、いつの間にかあのシーンはどうだ、このシーンはどうだという芝居の話になっていくんです。それは海外だったからこそだと思います」。

そのチームワークの良さはそれぞれの俳優の芝居にとけ込み、確実にスクリーンに滲み出ている。そして、ハワイの地で感じたもの、この映画で、この撮影で経験したものはしっかりと2人の女優の身心に刻まれ──「ハワイから帰ってきたときに、周りからスッキリした顔しているねって言われたんです。ストレスがなかったんだなぁと思った(笑)」という高梨の言葉に榮倉もうなずき「それは私も同じ! いつもは美味しいものを食べに行ってストレスを発散したりするけど、ハワイでももちろん美味しいもの食べたし食欲はあったけど、ムダな食欲は湧かなかった!」と気づけばガールズトーク。会話が弾むのは、いい映画である何よりの証だ。

たとえ大きな事件が起きなくても、壮大なテーマがなくても、派手なアクションがなくても、そのときの自分に必要な“何か”に気づかせてくれる映画、それが「わたしのハワイの歩きかた」。みのりや茜がそうだったように、きっと今の自分自身が見えてくる──。

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