「劇場を飛び出し、人を避け、逃げたくなった。」トム・アット・ザ・ファーム ARC監督/脚本 篠原隼士さんの映画レビュー(感想・評価)
劇場を飛び出し、人を避け、逃げたくなった。
こんな感情にさせられるとは思っていなかった。映画は大体、予告編やスチール、シノプシスを読み劇場に入る。なんの情報もなしに見る映画は素敵で発見に溢れるが、ドランである以上、そのこと自体が大きな情報であり無知のまま見ることは不可能だった。冒頭であまりにも吸い込まれ約5分で「大変なものを見に来てしまったのかもしれない。」という感覚になった。フランス語には温かみを勝手に感じているのだが怖いのなんの。同じカットが多用される。特にダイニングの引きの画。夢に出てきてしまう恐れがある。一回の映画で動物の遺体を二回見せられて若干腰が抜けるが牛を抱えるドランが美しすぎて何故か何故か拍手を贈りたくなる。そしてフランシスのトムに対する「強制」はこんなのあり得ないとか思うけど、至って普通に且つ日本で見れる光景だよな。と思いながら見ていた。とにかく感想が書けない今年の映画ナンバーワン。笑
劇場をとにかく抜け出したくて、駅改札の音を聞くのが怖く、耳を塞ぎたくなるが無音はもっと恐ろしく、出来ることならどこでもドアで実家に帰って鍋をつつき、それから寝る。それぐらいしないとこの映画は一生付きまとってくる。こんな感情にさせられたのは断言するが初。ああ、ドラン。これは映画に恋をしたとしか言いようが無いぞ。「恋」をした時の感情に似ているが全く違う。
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