劇場公開日 2014年11月1日

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「娘と、今は亡き父との関係性も素敵な一本」祝宴!シェフ talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0娘と、今は亡き父との関係性も素敵な一本

2024年11月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
愛が甘ければ、ニガウリも甘い

結局のところ、少女時代のシャオワンは、蠅師とも呼ばれ、料理人としては偉大「過ぎる」父に畏怖し、それで料理人への途を選ばなかったのではないでしょうか。
別に、モデルという職業に特別の関心があったわけではなく、「料理人ではない何か」として選びとった途に見えて仕方がありません。
評論子には。

そう考えてみると、父・蠅師の師匠だった虎鼻師の料理を慕う老夫婦のために古早料理を作るということに端を発してはいるものの、彼女が自然と宴席料理大会に取り組むことに
なったことも、そう不自然な流れではなかったのだろうと思います。
評論子は。

そこに、愛娘と、今は亡き父親との素敵な関係性がありありと見てとれるようで、全体としてコメディタッチで描かれている本作の中でも、キラリと光るほと、意味深いかったように思います。

本作は、別作品『1秒先の彼女』『熱帯魚』『LOVE GOGO』が素晴らしかったチェン・ユーシェン監督の手になる作品ということで鑑賞することとしたものでした。

その期待に少しも違(たが)わない、これも堂々の佳作だったと思います。
評論子は。

<映画のことば>
夢は見るもの。
カネは返すもの。
サプライズ!

(追記)
大会では、蠅師の元弟子で、シャオワンの対戦相手になったツァイの側に「料理ドクター」(まずい料理を救い、おいしくするドクター)を名乗る怪しげな料理人・ルーハイが、与(くみ)したのは、その師匠・鬼頭師の弟子としての立場からということではあるのですけれども。

しかし、シャオワンの料理人としての手腕を信じていたからこそ、ルーハイはいわば「敵側」につくとを承諾し、そうすることで、反対に彼女の料理人としての能力を触発するという意図があったのではないかとも思いました。
シャオワンの窮地に、「意義」を贈ったのは、武田信玄公ではありませんが「敵方に塩を贈る」意味もあったのではないでしょうか。
いささか「深読み」が過ぎることは重々承知の上ではあるのですけれども。(現に、クラゲは傷んでいたようでもありますけれども)
評論子としては、そう解釈したいところです。

(追記)
シャオワンの父・名料理人の蠅師が彼女に託した秘密のレシピノートを、不運にも焼かれてしまったのも「いったんはノートを渡したものの、宴席大会に臨んでは、自分の呪縛に囚われるべきではない。娘よ、自らの大道を歩めよ。」という、蠅師の娘・シャオワンに対するメッセージだったと言ったら、それは、評論子の独断・妄想というものでしょうか。
ノートを焼いた浮浪者は、往時には蠅師とともに名を台湾に轟(とどろ)かせていた道化師であってみれば(同じく料理人だったのであれば、当然、ノートの中身に見当はつ
いていたはずですから)。

旧友の娘であるシャオワンの料理人としての才能を信じればこその、実は亡き父・蠅師からの心を込めたメッセージだったのではないでしょうか。
(ここへ来て、あれはストーリーに脇筋を与えるための脚本上の都合だっただけ、という無粋なつっこみは、この際、無用にお願いします。)

そして、借金をこしらえた恋人に逃亡されてしまい、自らも逃亡しなければならない窮地に陥っていたシャオワンでしたけれども。

ここに来て、新たな恋の誕生を窺わせるような本作の結末から推して、そうは荒唐無稽な推測ではないと、評論子は思います。
(ルーハイの方でも、シャオワンに無関心ではないことを示唆するシーンが、あったようにも思います。)

まさに、禍福はあざなえる縄のごときものなのかも知れません。

(追記)
作中に、蠅師の師匠・虎鼻師の弟子時代が、思いきりのセピア色で描かれます。
(シャオワンの父・蝿師の師匠である虎鼻師がまだ「鼻たれ師」だった頃?)
料理の伝統は、こうして受け継がれていくものなのかも知れません。

(追記)
恥ずかしながら、台湾料理も中華料理の一系譜…くらいにしか評論子は考えていませんでしたけれども。
本作の鑑賞をきっかけとして調べてみると、ベースは中華料理といえども、独自の文化性を築いているようです。

今は愛鳳食堂という、屋台に毛の生えた程度の小さな食堂を切り盛りしている母親パフィーに「何か食べたいものは」と聞かれて、迷うことなく「魯肉飯(ルーローハン)」と答えたシャオワン。
ご存じのとおり、甘辛く煮込んだ豚肉をご飯にかけて食べる料理なのですけれども。
どうやら、台湾人のソウルフードとも呼ばれているようです。

いつかは台湾を訪れて、屋台料理(台湾料理)を楽しんでみたいものです。
そんな感慨もあった一本になりました。
評論子には。

(追記)
自炊をしている評論子の料理の味がイマイチなのも、その食材の怨念を充分には解消してあげていないからだと分かりました。
これも、鬼頭師のご教示の賜物です。

今日からは、不慮に命を失うことになった食材の怨念を解消すべく、その怨念を包丁に感じながら、より丁寧な調理を心がける所存であります。

いゃあ…。
映画鑑賞って、ホント勉強になりますね。
改めて実感しました。

talkie