「絶望の中に希望を見出す名作」風の谷のナウシカ 蜷川吝塀さんの映画レビュー(感想・評価)
絶望の中に希望を見出す名作
今朝(2025/08/15)までに、数回に分けて観ました。
海外渡航の巧妙で、ネトフリアプリで久しぶりにジブリ映画を観ることができました。日本で配信されていないのが未だに謎です。先日遂に配信解禁になった『火垂るの墓』を皮切りに、他の作品も配信が解禁されることを願っています。
さて、風の谷のナウシカ、この言葉を見るだけでストーリーのあらましが頭に浮かんでしまう人も多いと思います。映画は原作のごく序盤だそうですが、それだけでも胸が詰まる様な哀しい世界観です。
ナウシカの存在は、そんな哀しい世界に射し込む一縷の光です。豊かな喜怒哀楽の表現に加え、優しく温かい母性を感じさせる島本須美の声は、ナウシカの人物像に見事に合致しています。
王蟲をはじめとする虫達の動き、人々の細かな動きはジブリらしくて、作画に手抜きを感じさせません。
暴力により、半死半生にさせられた王蟲の幼生を止める際、酸の湖に足を突っ込んでしまった時のナウシカの叫び声は、今思い出すだけでも辛く、込み上げるものがあります。だからこそ王蟲の赤ちゃんは我にかえる事ができたのでしょうね。
完全体には遠く及ばずに、強制的にクシャナに復活をさせられた巨神兵の、それでも甚大な破壊力はたった二発の砲でも戦慄するのに充分でした。しかしそれをモノともしない王蟲の群れに、更に血の気が引きます。
丸腰で暴力に抗う、ナウシカの姿に感動を覚えると同時に、現実世界に続くやまない諍いを思い出し、全ての人の心にナウシカが存在すれば、人も虫も動物も植物も自由で平和に暮らせるなどと、叶わぬ希望を願ってしまいます。
本作は、鑑賞を通じて親から子へ、子から孫へと、問題について語り合い、家族や友人の間で地球環境のこれからを考えて欲しく思います。