「女が男を愛する時ならぬ、男が男を愛する時の打算と純情の答えは何処にあるのだろうか?」恋するリベラーチェ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
女が男を愛する時ならぬ、男が男を愛する時の打算と純情の答えは何処にあるのだろうか?
この映画でマット・デイモンのロングヘアー姿をみると、「グッド・ウィルハンティング」に出演していた頃の若くてキュートな彼を想い起させてくれる。
未だ未だこんな若い男子役に戻れるのには本当に驚いた。今は細かい皺などはCGで修正しているのだろうが、やはり、立ち振る舞いや、彼が醸し出す雰囲気が、若々しく見えた。急に「ドグマ」や「リプリー」そして「バガーヴァンス」に出ていた頃のイケメン時代の彼を思い出した。
しかし、このマット・デイモンの芸域、幅の広い事には毎回驚嘆する。あまりにも多くの異なるキャラクターにチャレンジするので、決して一つの役柄のイメージで固まる事のない俳優だ。本当に巧く化ける稼業だとつくづく彼には感心する。
だが、流石に今回はイケメンの彼のイメージが壊れるので、マイケル・ダグラスとのラブシーンだけは、お願いだから避けて欲しかったと言っても無理な役処だろう。
これでは彼の女性ファンが離れてしまいはしないか、映画を観ている間中不安であった。
でも、逆説的に考えると、それは良い意味で常に彼のファンの求める一つの理想の形を破り、期待を裏切り続けている実力派俳優魂の現れでも有るのだろう。
そう言えば、やはりこの作品同様にソダーバーグ監督作品の「インフォーマント」ではイメチェンに成功して、メタボな主人公を演じたマットだが、それ後は余り元通りの体型にはならなくなった。
メリル・ストリープも太ったオバサン役にチャレンジした後はやはり、完璧には戻らなかった。ここに色々な役柄に挑戦する俳優の計算通りに終わらないリスクが潜んでいる。
一方の今回のもう一人の主人公リベラーチェを演じたマイケル・ダグラスもいつもアクの強い役を演じる人だが、本作でも、巧い事は非常に巧いのだが、正直激キモイのだ。
有る意味本作は、コメディー映画でも有るのだから、そのキモサが売りの一つだろうから、そう言う意味では最高に上出来なのかな?エミー賞も受賞しているわけだから・・・
リベラーチェは実在したスターピアニストなのだろうが、もしも今回の映画でマイケルが演じている彼が、リベラーチェ本人に似ていると言うのであれば、彼は何処から見ても、誰が見ても直ぐに分る、ゲイ丸出しのオネエキャラに見えた。
だが、ゲイの噂がゴシップ誌に掲載されると、その度大金を払って彼は、イメージダウンを阻止しようと、手を回したらしいが、本当に当時のファンは気が付いてなかったのだろうか?
アメリカの厳しい芸能ビジネス界で、彼は長年スターの座に居られたのだから、そんなイメージよりも、やはり観客を楽しませる事が出来る、ピアノ弾きとしての実力は最高に有った事を彼のファンは認めていたに違いない。そんな彼が、どうして自分自身のイメージの悪化を恐れ、自信を抱いていなかったのか?それが不思議だった。
勿論実在のリベラーチェ本人は音楽家としては、プライドの高い自信家であった筈なのだが、本心は、素のキャラに本人自身が、きっと自信が持てずに、心の弱いキャラだったのかも知れない。近くにいる人間はみんな、自分の金が目当てと逆差別的な被害者意識に固まり、心を閉ざした孤独な人物だったのだろう。
きっと、そんな気弱なリベラーチェとスコットは、共依存の関係で結ばれていたのだろう。
金と仕事、名声を得ても、尚満足出来ずに、不安で孤独なリベラーチェが哀しい。
贅沢な生活をして、金も欲しいが、しかし、好きな仕事に就いて人生の満足を得る事が不可能となったスコットも悲劇だ。しかも、若い貴重な時代をリベラーチェに捧げて来たのだから、スコットがイライラ不機嫌になり、麻薬に溺れていくのも容易に理解出来る。
ここに人間の幸せの本質とは何か?その答えが描かれているのだろう。
本作は、人を愛し続ける事の素晴らしさと、難しさとが混然一体となり描かれる。