「『笑いって差別でしょう?私が自分で常に承知しているのは『私は差別されているから笑われているんだ』ってことなの by マツコ・デラックス」恋するリベラーチェ さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
『笑いって差別でしょう?私が自分で常に承知しているのは『私は差別されているから笑われているんだ』ってことなの by マツコ・デラックス
1940~80年代に活躍し、「世界が恋したピアニスト」と呼ばれ人気を博したピアニスト「リベラーチェ(マイケル・ダグラス)」。その元恋人:スコット・トーソンの回想録を原作とし、リベラ-チェの知られざる晩年を描いた作品です。
リベラ-チェはごっついゴールドの指輪を何個も付け、スワロフスキーのビーズに、羽をワサワサつけた派手で奇妙な衣装に身を包み、軽妙なトークで観客を魅了しつつも、クラシックもポップスも華麗に弾きこなす天才的なエンターテナー。演奏すげーです。
そんなリベラ-チェが、金髪の美青年スコット(マット・デイモン)を見初めます。スコット当時10代。マット・デイモン(43歳くらい?)が特殊メイクCG?でつるつるのお肌で登場して、びっくりしました。
リベラーチェの口説き方は、ごくごく簡単。お金と同情です。豪奢な自宅に呼び、こんなに若い男を沢山侍らせてすんごい家に住んでるけど、「実は、僕は孤独なんだ」とアピールするんです。10代のスコットは、勿論ころっといきます。
本当にリベラーチェは、孤独で必死なんです。派手なショービスの世界に君臨しながら、公にはできない秘密があります。同性愛者ということ。そして、「老い」です。カツラをかぶり整形とメイクで老いを隠し、同性愛者であることをすっぱ抜いた雑誌を訴え、スターの地位を守ろうとするリベラーチェを、マイケル・ダグラスが怪演しています。最初はその滑稽さに笑ってしまいますが、段々と可愛く見えてしまうから不思議です。マイケル、今まで嫌っててごめん。と、素直に思いました。
リベラーチェと同棲したスコットは、直ぐに太ってしまいます。リベラーチェが望むように整形とダイエット薬を服用するのですが、その薬のせいで情緒不安定に……。縛り付けるリベラーチェと不安定なスコットの関係は、どんどんと刺々しくなっていきます。永延と続く痴話喧嘩は、痛々しく、息苦しく、こちらまで鳩尾が痛くなりました。当たり前です。親子ほど歳が違おうと、同性であろうと、こと恋愛の縺れとはこういうもんですよね。
そしてスコットは、新たな恋人の出現によりあっけなく捨てられます。養子にする約束も、反故にされ、普通の生活に戻ることに。スコットも精神的に追い詰められていたので、リベラーチェと距離をとった方が良いように思いました。が、顔まで変えたスコットが、哀れにも思えました。
しかしスコットは、エイズ(当初は心不全と発表)で今際の際のリベラーチェに呼ばれます。CG処理をされているのでしょうが、この時のマイケルの顔が土気色で痩せてて酷いです。
「あの頃が、一番楽しかった」
やせ細ったリベラーチェに告白され、涙を流すスコット。スコットが救われた瞬間です。こんな時が来ないと、本当に愛していた人が誰なのか分からないものですね。つか、自分の性欲と孤独を満たす為に、10代の男の子の人生を変えてしまった責任を、死の床でやっと認識したのかじいさん!と腹立たしくなりました。でもスコットも「あの頃が楽しかった」と泣いていたので、まぁ、じゃぁー、いいや。
本作に好感が持てたのは、恐らく恋人:スコット目線であった為、リベラーチェへの恋慕の気持ちが全面に押し出されているからだと思います。愛されたい。優しくされたい。新たな恋人に心移りしているリベラーチェを、また振り向かせたい。その健気で、真っ直ぐな思いに、共感したからだと思います。
さて最後に、お久しぶりなロブ・ロウのお話を。ロブは、整形外科医で出演しています。自身も整形しているという設定なのでしょう。見事な(?)整形顔です。テープで引っ張っているのか?はりついた表情の、いかにもな整形顔です。
今更ですが、マイケル・ダグラスの俳優魂に感動し、マット・デイモンを、まさかこんなにキュートだと思う日が来るとは!と驚いた本作。
ちょっと、強めにお薦めします。