「愛情の屈折っぷり。」THE ICEMAN 氷の処刑人 rockoさんの映画レビュー(感想・評価)
愛情の屈折っぷり。
200人も人を殺したプロの殺し屋の話です。逮捕時まで家族には知られていなかったのがすごい。人は仕事として殺し、良心の呵責は一切感じない。これだけ聞くとただのサイコパスじゃないかと思いますが、この主人公の面白いところは、家族を心から愛していることです。なぜこういう心理に至ったのか考えたのですが、彼の妻と娘たちの、穢れを知らない、純真で、無知で、無力で、世間知らずな人間性を観ていて合点がいった気がしました。
たぶん彼は自分の理想の楽園を作りたかったんですね。苦しみも穢れも何もない、自分の分身の、美しい彼女たちが住む彼だけの美しい世界。それを守るためにはどんな犠牲もいとわない。幸い(?)良心の呵責に鈍感で優秀な殺し屋だったために、その利益をすべて楽園のためにつぎ込んだ。娘たちを修道系の学校に入れたりしたのもそういうことなのかと思います。最後の彼のコメントで、悪いことをしたのはわかっているけど、間違ったことをしたとは思わない、といった内容はその辺からくるんだと思います。たぶん。
何を隠そう僕自身変人で、自分の猫しか愛することができない人間です。(いや、もちろん親兄弟、嫁も愛していますが、本当に心から自分が素直になれるのは、僕の猫の前だけです。)なぜそこまでその猫を愛するのか、自問してみたんですが、おそらくその猫は僕の子供時代の性格と瓜二つで、まるで自分の美しい部分だけを抽出した分身のような存在だからなんだと思います。彼には世の中のつらいことなど知ることもなく、純粋に、無垢なまま、愛情だけを知っていつまでも生きていてほしいと思っています。こういうことを他人が聞いたら病院に送られてしまうので、誰にも言いませんが。。。たぶん主人公もそんな気分だったんじゃないでしょうか。