「大人たちが本気で作った子供映画」瀬戸内海賊物語 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
大人たちが本気で作った子供映画
プロデューサーの益田祐美子さんが主催する「瀬戸内国際こども映画祭」に愛媛出身の大森研一監督が温めていた脚本を応募、見事グランプリを受賞、賞金は100万円と少なめだが映画化が実現した。面白くてためになるといった、言うは易く難しい両立を見事に具現化、これなら多くの協賛や文化庁の助成が得られるのも頷けます、益田祐美子さんのプロデュース力には脱帽です。
村上水軍の末裔、楓が蔵にあった宝の地図を頼りに小学校の学友たちと宝探しに奮闘、宝への執着は私欲ではなく島の老朽化したフェリーや小豆島オリーブ公園の風車の修理をしたいという見上げた志。
あくまでも子供たちが主役なので大人たちはあえて手助けしないプロットには気が揉める、瀬戸内海の潮流は危険すぎるとハラハラしたがCG合成なので一安心。
インディージョーンズ顔負けの宝島の仕掛けも凝っている、いささか頼りない小泉先生とのダーツ合戦や横笛、からくり箪笥に高額なカメラのチラシ等々、伏線の張り方、回収もお上手でした。
楓に協力するぽっちゃりの学と背高の冬樹はスターウォーズのR2D2やC-3POにも思えるので可笑しいし、子供たちを支える大人たちには芸達者を揃え脇を固めたキャスティングも良いですね。
島の伝統産業のお醤油造り、観光スポットのエンジェルロード、魔女の宅急便にも出てきたギリシャ風車なども交えて小豆島のPRにもそつがない。
村上家と塩飽水軍の宮本家の因縁は深いのだろう、現代でも折合が悪く描かれるが最後は協力、造船や操船技術に長けていたと言う塩飽末裔の宮本家が造船所をやっているなど歴史好きも納得でしょう、ただ息子の龍一のネックレスが洞窟脱出の鍵になっていたのは宝隠しに両家が関わっていたのを匂わせますが解釈が難しい。
ようやく持ち帰った宝箱、開けてびっくり陶器の置物しか・・、それでも子供たちの頑張りに大人たちも悔い改めてフェリーの廃棄は見直され一件落着かと思ったら、流石は玉緒おばあちゃん、大人になるまでお宝は秘密とばかりに落語の芝浜のようなオチ、風車は直してくれたのですね・・。
大人たちが本気で作った子供映画、お見事でした。