劇場公開日 2013年11月8日

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JUDGE ジャッジ : インタビュー

2013年11月6日更新
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有村架純、自らのイメージ壊すべく臨んだ密室スリラー「JUDGE ジャッジ」

デビューからわずか3年で数々の話題作に出演し、今年はNHK連続テレビ小説「あまちゃん」で小泉今日子の若かりし頃を演じ、全国区のブレイクを果たした有村架純。その愛らしいルックスはもちろん、作品を追うごとに成長を見せる演技力にも大きな注目が集まる彼女の新たな出演作が、人気コミックを実写化した「JUDGE ジャッジ」(瀬戸康史主演)だ。7つの大罪を犯した者たちが監禁され、死の裁判ゲームを課される密室スリラーで、有村は“傲慢”の罪を背負わされた元アイドルを演じた。「新しい自分をどんどん表現していきたい。自分のイメージをいい意味で壊していきたいんです」という有村の言葉通り、本作はファンの度肝を抜き、女優としてさらなる飛躍を印象付けることになる。(取材・文/内田涼、写真/堀弥生)

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「傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、大食、色欲」という大罪を背負った7人の男女は、手錠をはめられた状態で密室に閉じ込められる。生き残る方法がただひとつ。制限時間内に多数決で最も重罪と思われる人物を選択し、死の制裁を受けさせるのだ。ひとり、またひとりと犠牲者が出るなか、生き残った者たちは疑心暗鬼に陥り、恐るべき本性をむき出しにする。「映画が描く罪って、人間誰しもが持っている罪だと思うんです。それが極限状態に追い込まれて、表に出てしまう恐ろしさを感じました。登場キャラクターの誰の肩も持てないけど、罪の重さを他人が判断できるのかなって」と本作が突きつけるクエスチョンに、有村は言葉を失う。

リアリティを追求するため、有村や主演の瀬戸をはじめ7人のキャスト全員が、薄暗い密室のセットに閉じ込められたばかりか、撮影も劇中に登場する監視カメラの視点で行われた。「窓も一切ないセットで、手錠もリアルに重いんですよ。でも一番の戸惑いは、やっぱりカメラですね。ふだんなら現場にあるはずの大きなカメラが一台もなく、小型カメラがあちこちに……という感じ。だから、自分が今どのカメラで撮られているのか、まったくわからないんです」。

ひとつのシーンをさまざまな視点で切り取るため、同じ演技を数回にわたり繰り返す必要もあったといい「慣れてしまうといけないから、自分のなかで新鮮さをキープするのが大変でした」と現場での集中力も試されることになった。

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さらに異様な緊張感を演出するのが、罪人たちが強制的にかぶらされる動物のマスクだ。上映時間77分の本作において、冒頭30分間キャスト陣の顔がすっぽり隠されてしまうのだから、ファンには酷な時間となりそうだ。有村が着用したのは、傲慢をシンボライズしたライオンのマスクで「これをかぶって演技するんですから(笑)。息苦しいのはもちろん、暑いし(制作に使われた)ニスのにおいもこもっていて」と撮影に使われた実物を前に、苦々しい表情を見せる。

やっとマスクが外され、有村のキュートな素顔が現れたと思ったのも束の間。映画の後半では何としても生き残ろうと、“心の仮面”を外し、内に秘めた傲慢さを存分に発揮するライオン=有村の姿がスクリーンに映し出される。「本性を表に出す前と後で、キャラクターの違いを出したかったんです。最初のうちは『守ってあげたい』『ほっとけない』と思わせる妹的な存在だと見せかけて、実はものすごく腹黒くて、どうすれば自分が助かるか一番考えている。自分で言うのも変ですが、かわいくてずる賢い女の子なんです」と複雑でダークな役柄を、明快かつクールに分析する。

もちろん「ほとんどのシーンで本番ギリギリまで、自分なりの正解が出せなかったですね。作品のテイストや役柄も、経験がなかったですから」と演じる上での難しさや葛藤があったのも事実。それだけに「密室に閉じ込められたライオンと、現場に置かれた私のシチュエーションが重なっていた分、演じきった達成感がとても大きかったです。この作品で得たことですか? うまく言葉にできませんが、新しい表現を手に入れられたところです」と誇らしげだ。

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2013年、有村の活躍が「あまちゃん」に限らないことは、映画ファンならご承知の通り。2月に公開された主演作「リトル・マエストラ」を皮切りに、ゲスト出演を果たした「コドモ警察」、人気キャラクター・正汽雅(まさきみやび)役で続投する「劇場版 SPEC 結(クローズ) 漸(ゼン)ノ篇」「劇場版 SPEC 結(クローズ) 爻(コウ)ノ篇」の連続公開とその勢いはとどまることを知らず。もちろん、ドラマやCMと今やテレビで見ない日はない。「以前に比べてお仕事に対する責任感が、より強くなっているし、その分一層(仕事を)楽しんでいる自分がいます」とほほ笑む。

多忙を極めるなか、時間を見つけてはよく映画を観賞するのだとか。最近のお気に入りは石井岳龍監督の「生きてるものはいないのか」だといい、「独特の世界観をもった映画を見ながら、その空気にどっぷり浸るのが好きですね」。さらにもう1本、「日本らしい上品さにひかれる」という理由で、山田洋次監督の「東京家族」をお気に入りに挙げている。「ひとりの観客として映画を楽しむのはもちろん、どうしても女優として『私もこんなお芝居がしてみたいな』っていう目線になりますね。『JUDGE ジャッジ』は新しい自分を知るきっかけになった作品。これから、もっとふり幅のある女優を目指したいし、そのためには表現力を磨いて、(作品を)ご覧になる皆さんをグッとひきつける力が欲しいと思います」と語る弾んだ声は、女優・有村架純が着実にステップアップする足音に聞こえる。

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