「ニシノユキヒコが幸福でありますように」ニシノユキヒコの恋と冒険 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ニシノユキヒコが幸福でありますように
稀代のモテ男、ニシノユキヒコ。
その数々の女性遍歴。
『人のセックスを笑うな』の井口奈己監督作。
同作でも印象的だったゆったりとした演出、間、長回しは健在。
間合いや長回しの多用で、演者のナチュラルな演技を引き出している。
加えて、ユルくてコミカル。
葬式での楽団が下手過ぎて何演奏してるか分かんねぇ~。
猫ちゃんの毛舐めにほっこり。
全体的に不思議な世界観。シュールと言うより、ファンタジー。
始まってすぐ、ニシノは交通事故で死亡、かつての恋人の娘の前に幽霊となって現れる。
共に自身の葬式へ。
そこで恋人の娘はニシノの女性遍歴の数々をかつての恋人の一人から聞く事になるのだが…。
ニシノユキヒコ。
ルックスよし、性格よし。
女性の望むものを全て満たし、皆彼の虜に。
二股、三股、四股は当たり前。
だらしないけど、嫌みが無い。
ところが、最後には女性たちは彼の元を去り、一人になってしまう。
憎めなくて、可笑しくも、ちょっと切ない。
竹野内豊にこんな演技の一面があったとはね~!…と感心するくらい、飄々とした好演。
モテモテ二枚目は自虐的でもあり、滑稽でもあり、妙な親近感が沸く。
十人十色の女性たちを見る作品でもある。
麻生久美子、阿川佐和子、尾野真千子、本田翼、木村文乃、成海璃子…この美しく揃った面々!
全員が、可愛らしく、魅力的!
お初であったが、みなみ役の女の子、中村ゆりかがこれまた可愛らしい。
パーフェクトマンのニシノは何故最後は必ずフラれる?
この“パーフェクト”な所が原因かな?
人間、パーフェクト過ぎると、かえって欠点でもある。
やっぱり人間、欠点があってこそ愛しい。
また彼は、恋し恋され恋する事に関しては百戦錬磨だが、“愛する”という事に関しては長けているとは言い難い。
実は本当は“愛”を求めていて、ある恋人への「結婚しよう」や「寂しいよ」は彼の本音なのかもしれない。
死後も幽霊となって現れたニシノは、愛を求めてさ迷う姿。
ニシノも本当は、欠点だけの不器用な男。
だからどうしても、彼が嫌いになれない。
ニシノユキヒコが幸福でありますように。