「生命の永遠性の物語と成長物語の不調和」2つ目の窓 lylycoさんの映画レビュー(感想・評価)
生命の永遠性の物語と成長物語の不調和
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イサを見送るくだりやポスタービジュアルにもなっている海中のシーンなど、見所は沢山あった。松田美由紀や杉本哲太、常田富士男らの俳優勢も本当に凄い仕事をしている。吉永淳という人は初めてみたけれど、彼女もまた伸び伸びとして、若い美しさに満ちた素晴らしい演技をしている。あれらの芝居をフィルムに焼き付けてみせた監督の手腕は無二のものかもしれないとさえ思う。
唯一の不満は脚本だ。特に主人公のひとり、界人と母の物語には常に違和感がつきまとって最後まで離れなかった。クライマックスで感情を爆発させるに至って、その雑な展開に冷めてしまった。母との和解と成長を描くことで杏子に向き合う姿を描いているのだろうけれど、そのビルドゥングスロマン的な展開を支える物語的な強度が圧倒的に足りない。母との確執から和解にいたるシークエンスを奄美の台風にのみ託す演出や、界人に父の手紙の言葉を伏線に「母さんはおれが守る」などと叫ばせる安直さが、全体の繊細さを完全に裏切っている。
瑕は少ないけれど、個人的にはあまりに大きすぎる瑕だった。もちろん、あれを面白いと思う人がいてもおかしいとは思わないけれど。
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